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書籍

ヴァズシャラの日記

ヴァズシャラが疑うモンクでいたのはたった1週間だというのに、もう自分の決断を後悔している。2つの王国が築かれる以前にここで何が起こったのか誰も話さないけれど、それはいつでもみんなの心の中にある。まるで大きなセンチタイガーが私たちの晩餐を食べているのに、その鼻先をひっぱたいてやることを禁じられているみたい。どこかの月の司祭がここで闇をかき混ぜて、ドロ・マスラをニルニに送ってやったってことはみんな知ってる。でも、なぜ? どうやって? 誰もそのことは言わない。ヴァズシャラはもちろん、あらゆる噂を聞いている。ジャ・カジートが誰も聞いていないのを確認してから笑うような、しょうもない物語。たいていのカジートは笑うけれど、馬鹿みたいな話はよく、暗い真実を隠していることを私は知っている。ここで本当に何が起きたのかを見つけださなきゃ。

* * *

書いていて、ヴァズシャラの爪がつりそう! ものすごくたくさんのモンクたちと話して、その話を紙に書きとめた。認めなければならないけれど、これらの話はジャ・カジートとして学んだ物語よりもずっと暗い。役者たちはいつも同じ。頭のおかしいモンクたちと、「石を打つ者」と呼ばれる月の司祭。どうやら、この司祭は魔法の杖を持っていて、それで地面を打つと秘密を話し出すらしい。この魔法の杖がどこからやって来たものなのか、あるいはこの月の司祭が死んだ後どこにいったのか。それは誰も知らないから、ただの作り話かもしれない。でも、謎はひとつずつ解決しなきゃ、そうでしょ?

明けても暮れても、この月の司祭は地面を打って、ニルニのあらゆる秘密を学んでいた。でも結局、魔法の杖はニルニの秘密を出し尽くしてしまい、もっと暗い秘密を語り始めた。ナミイラの秘密を。打つ者はひたすら耳を傾け、年老いて正気を失ってしまった。聖堂のモンクたちも正気を失った。なぜなら、石を打つのが決して止まなかったから。それは大きく、規則的な音だった――コンコン、コンコン、コンコン。心臓の鼓動みたい、そうでしょ? ついに、モンクたちは石を打つ者を殺す計画を練った。モンクたちはハイ・ルナリウムに彼を誘い込み、湾曲したナイフで死ぬまで刺し続けた。打つ者の死体からすべての血と秘密が流れ出して聖堂の扉を打ち開き、モー・オブ・ローカジュと、その先にある闇を明らかにした。

ここからは物語が食い違ってくる。いくつかの説明で、打つ者は血が流れ出してしまった後に起き上がり、稲妻でモンクたちを全員殺してしまう。他の説明では、ローカジュの喉元から大きな翼を持つ獣が飛び出してきて、その爪と牙でモンクたちを切り刻んでしまう。でも、これじゃ意味が通らない。聖堂のそこら中に散らばっている封印は明らかに、月の司祭がモンクたちに挟み撃ちにされて、ベント・スピリットを召喚したことを示している。それに私はハイ・ルナリウムにある扉がどんな見た目をしているか知っている。だから打つ者は生き残って、少なくともモンクたちのうち何人かをベントの踊りに押し込んだはずじゃない? まあいいか。もしかしたら罪の意識だったのかもしれない。疑うモンクは評判が悪いから。多くのカジートがドロ・マスラの解放に教団が一役買っていると考えている。もしかしたら本当かもしれないって思い始めてきたわ。ヴァズシャラもパパの言うことを聞いて、漁師にでもなっておくべきだった。などなど。

* * *

こんな場所は滅びてしまえ! 今日、クラン・ドロ修道院長がハイ・ルナリウムにヴァズシャラを呼び寄せて、人生で最悪の罵声を浴びせてきた。「おしゃべりはもうなし! 質問もなしだ!」まったく! いったいこの場所のどこに喋れるものがあるっていうの。この聖堂は墓よ。誰も笑わないし、歌ったり、踊ったりもしない。ただ詠唱して、囁いて、尻尾をしまって祈るだけ。それだけでもヴァズシャラは逃げだしたくなるけど、まだあるのよ。修道院長の目に何かがあった。怒りじゃなかった… いいえ、違う。あれは何というか… 無だった。鈍くて暗い無。死んだ猫の目みたい。尻尾が立っちゃったくらいよ。ヴァズシャラはもう我慢できない。夜が明けたらすぐに海へ向けて出発するわ。この場所に月の呪いあれ、それから修道院長にも!

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