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書籍

黄昏の儀式と讃美歌

スヴィラシュ・サハーラについて

「追い払い」の歌は暁の時代にアズラーの舌からこぼれ落ちた、3つの黄昏の賛歌の一つである。
黄昏の淑女その人と同様、「追い払い」の歌はつかみどころがなく、予測がつかない。
どうしても必要な時以外に歌うべきではない。

古代において、この歌は病気を治療し、サトウキビにつく虫を撃退するために使われていた。
しかし暁中期がやって来て月の司祭たちにいたずらをして、彼らを忘れっぽくさせてしまった。
今日、歌はドロ・マスラを追い払うのに用いられるのみである。

ドロ・マスラの踊りは音楽ではなく、ローカジュの心臓の鼓動そのものだ。
それは歌のない歌であり、暗く、誘惑的である。
鼓動はひたすら繰り返される一つの嘘で、それを聞く猫にとってしまいには真実になってしまう。
カジートがローカジュの意志を真実として受け入れるとき、その者はリドル・サールを忘れ、迷い猫になる。
本当に歪んでしまったカジートは歌によって救うことができず、ナイフと月の光で追放する他ない。
しかし心臓に抗い続ける猫は闇からの帰還を果たすこともある。

スヴィラシュ・サハーラの力はその捉えどころのなさにある。
クランマザーはドロ・マスラの前で歌ってはいけないと教えているが、これは賢明な判断だ。
うかつに歌を歌えば、心臓の近くに引き込まれることになる。
歌は鼓動に共鳴し、そのうちに尻尾が引きつり、モー・オブ・ローカジュの中へと髭から滑り落ちていくことになるだろう。
「追い払い」の歌は心臓の律動を破ることのできる唯一の歌である。
その音符は影のように音階を上下に激しく揺さぶり、闇を混乱させ、心臓を弱め、鈍らせる。
最終的に律動は破れ、腐敗は過ぎ去る。

しかしながら、スヴィラシュ・サハーラを歌う者には大きな危険がつきまとう。
ドロ・マスラはアズラの讃美歌を嫌い、それを歌う猫を殺すためならば何でもする。
ゆえに、先唱者はよく聞くがいい。
ナミイラの暗い砂場と対峙するのであれば、素早く動き、警戒を怠らないことだ。
一瞬の油断が破滅を招きかねない。

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