2920: 第一紀 最後の年
カルロヴァック・タウンウェイ著
2920年 恵雨の月8日
帝都 (シロディール)
嵐が皇太子の寝室の窓を叩き、湿った空気が香炉の吐き出す香やハーブの香りと混じりあっていた。
「お母様の皇后陛下からのお手紙をお持ちしました」と、使者が言った。「その後のお体の具合を心配しておられます」
「心配性な母親だ」ジュイレック皇太子はベッドの中で笑った。
「母親が息子を心配するのは当然のことです」と、最高顧問の息子サヴィリエン・チョラックが言った。
「アカヴィリ、我が家では何一つ当然のようにはいかないのだ。母は追放され、父が私を反逆者と疑い、毒を盛ったのではないかと案じている」皇太子はうんざりした様子で枕に頭を沈めた。「皇帝は皇帝で、自分のように食べるもの全てを毒見させるよう勧めてくる」
「多くの陰謀がありますから」アカヴィリはうなずいた。「あなたは3週間近くも床につき、国中の治癒師が舞踏会のダンスの相手のようにとっかえひっかえあなたの治癒にあたりました。とにかく、今は回復に向かわれているようですが」
「早くモロウウィンドへ兵を率いて行けるぐらいに回復したいものだ」と、ジュイレックが答えた。
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