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書籍

2920年、第8巻

2920: 第一紀 最後の年

カルロヴァック・タウンウェイ著

2920年 蒔種の月29日
ヘガテ (ハンマーフェル)

「帝都からあなた宛にお手紙が届いてるわよ」尼僧長はそう言いながらコルダへ羊皮紙を渡した。若い尼僧たちは笑みを浮かべながらも驚いた表情をしいていた。コルダの姉、リッジャは頻繁に、少なくとも月に一度は手紙を書いてよこすのだった。

コルダは手紙を受け取り、お気に入りの場所、庭で手紙を読もうと出て行った。そこは砂色で単調な修道院の世界の中で唯一のオアシスであった。手紙自体には大した内容は書かれていなかった。宮廷内のゴシップや最新の流行ファッション(ちなみにワインダーク色のベルベット素材が流行るらしい)、ますますひどくなる皇帝の妄執などについてであった。

「あなたはこんな生活から離れて暮らせて本当に幸運よ」とリッジャは綴っていた。「皇帝はどうやら最近の戦での大失敗が、身内に密偵が潜んでたせいと確信してるみたい。私まで疑われる始末よ。ラプトガ様があなたに、あたしと同じようなおかしな生活を送らせませんように」

コルダは砂の音に耳をそばだて、ラプトガにまったく逆の祈りを捧げた。

2920年 恵雨の月3日
コールドハーバー (オブリビオン)

暗い王宮の濁った水に浸された廊下を、ソーサ・シルは全速力で進んでいた。彼のまわりでは、気味の悪いぶよぶよした生き物が葦の茎の間を這い回り、頭上のアーチでは白い炎が明るく燃え上がっては消え、死の腐敗臭と花の香水の香りが交互に襲ってきた。オブリビオンにデイドラ公たちを訪ねるのはこれが初めてではないが、ここへくるたびに違ったものに出迎えられるのだった。

だが、彼には目的があり、まわりの奇怪なものに気をとられている時間はなかった。

八人の最も位の高いデイドラ公たちが、溶けかけた丸屋根の広間で彼を待っていた。黄昏と暁のデイドラ公アズラ、企みのデイドラ公ボエシア、知恵のデイドラ、ハルマ・モラ、狩人ハーシーン、呪いの神マラキャス、災いのデイドラ公メエルーンズ・デイゴン、憤怒のデイドラ公モラグ・バル、そして狂ったシェオゴラスである。

頭上の空から歪んだ影が落ち、彼らの集いを覆い隠していた。

2920年 恵雨の月5日
アルテウム島 (サマーセット)

ソーサ・シルの声が洞窟に響き渡った。「岩をどかせ!」

すぐに、見習いたちが巨石を転がして脇へやり、夢見る洞窟への入口を開いた。現れたソーサ・シルの顔は灰にまみれ、ひどくやつれていた。彼は何ヶ月、いや何年も旅してきたように感じていたが、実際は数日しかたっていなかった。ライラザが彼の腕をとり、支えようとしたが、彼は優しくほほえみ、首を振ってそれを断った。

「それで… うまくいったのですか?」と、彼女はたずねた。

「デイドラ公たちはこちらの提案を受け入れた」彼は感情のない声で言った。「ギルヴァーデイルに起こったような災いはこれ以上起こらない。彼らは今後、魔女や妖術師を通じてのみ、人間やエルフと関わることになる」

「それで、そのかわりに何を約束してきたんですか?」と、ウェレグというノルドの子供がたずねた。

「デイドラとの契約は--」イアケシス宮殿を、サイジック会の長の居所へ向かって進みながらソーサ・シルは言った。「入門まもない者には聞かせられない」

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