イル・アムハキムは、片手に新たな契約を、もう片方の手に望遠鏡を持ち、船の前方に立っていた。海の水しぶきがかかっても微笑んでいた。 「位置につきましょうか?」 彼はうなずき、その見晴らしのいい場所から降りた。今回、宝は逃げはしない。 一瞬弱気になったが、彼はその囚人と対峙するため船室に入り込んだ。彼女は見た目こそ優雅な花そのものだが、その口から出る言葉は毒々しいものだと彼はわかっていた。 彼は咳払いをした。「あの太鼓の音が聞こえますか? あなたの兄弟を見つけましたよ。彼には悪事の報いを受けさせる」 手で顔を覆っていたそのダークエルフは顔を上げた。「そんなことを私が気にするとでも? 愚か者め」彼女は塩がついたその顔をイル・アムハキムから背けた。「私の兄弟は、裏切りの罪で死んだ私を見ることになる。彼の死は私の自由を意味する」 船長はその言葉に顔をしかめた。これが他の土地や自分自身の土地の王家のあり方なのだろうかと疑問に思わずにはいられなかった。次の港に着いた時、後援者に軽蔑されるだろうか? 彼は踵を返し、船室から出て扉を閉めた。しかしその直前、ダークエルフの手の中に光る尖った金属を見た。
イル・アムハキムの航海 第7巻

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