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書籍

イル・アムハキムの航海 第3巻

逆風の悪霊をものともしない勇敢なイル・アムハキムは、船を無人島へと向かわせた。船員たちは2週間以上も前に物資を使い果たし、日射病で疲れ切って横たわっていた。右隣で、誰かが住んでいる気配がないか切望して海岸を探す船長に、イル・アムハキムは目をやった。

「何も見えません」と、安堵と失望の様子で彼女は知らせた。

「では鐘を打て。まだ立てる者たちを起こすのだ」。身体が不自由になることや、乗組員が不在になることは、航海が終わることを意味した。彼は貨物を持って戻ってくるかもしれないし、戻ってすらこないかもしれなかった。

全員すぐに何もない甲板を離れ、開かれた島の海岸へと逃れた。木々には果実が実っていて、人を酔わせる糖分で酔った男たちは、死とよく似た昏睡状態に陥った。

イル・アムハキムは船の見張りをしていたため、濃厚なネクターに慰めを見いだしはしなかった。まさにその空気が、期待で震えた。

「お休みになったほうがいいでしょう」。彼の見張り望遠鏡の上に手がかかり、それを取り上げた。彼はうなずき、浜辺の簡易ベッドについた。しかし目を閉じた直後、彼は聞き覚えのある、波をかき分けるオールの音を聞いた。

「攻撃だ!」と、彼は鞘から剣を抜きながら叫んだ。皆の目が彼に向き、真昼の日差しが新しい1日を知らせていた。砂が大量の水のように、彼の顎髭から流れ出た。

「起こさないのが最善だと思ったのです」船長は顔を背け、ニヤニヤ笑う自分の顔を見せないようにした。それでも、船を漕いで食料を運んでいる労働者たちは、騒々しいどよめきをまた開始するのだった。イル・アムハキムには、彼らがそうしたことで恨むことはできなかった。

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