ヒストの前には何も存在しなかった。ヒストはすべてを意味し、すべてを与えた。 ジャラリートはこれを知っていた。すべてのアルゴニアンが生まれた時から本能的にこれを知っていた。それならなぜヒストは彼らに話しかけなかったのだろうか? 古い物語にはヒストは人々に話しかけるとなかったか? 来る日も来る日も、ジャラリートは犠牲を払い、捧げ物を焼いた。彼は詠唱し、祈った。ほとんど何も食べず、ヒストと人々との古代の繋がりを取り戻すことに尽力した。 ある朝妻が、彼にちゃんと食事をとるように言った。「あなたがそれをどれほど望んでいようとも、ヒスト自体をもてなすことはできない」と彼女は静かに言葉を荒げた。 その言葉が思考に突き刺さり、彼の目は瞬いた。「ヒストの樹液だ!」と叫ぶと、愛を込めて自分の額を彼女の額にそっと合わせた。 ジャラリートは錬金術師ではないが、次から次に調合法を編み出していった。様々なイコルを蒸留すると、量を変えてヒストの樹液と混ぜ合わせ、それらすべてを試して調整を繰り返した。静寂を打ち破れとヒストが駆り立てているように感じられたのだ。 ついにジャラリートは最上の煎じ薬を作り上げた。それを口に含み、濃厚で甘い液体が舌を覆うのをゆっくりと味わった。いっぱいに伸びたヒストの大枝の下に静かに立つ彼の目には、悟りの輝きに満ちていた。 「私はあなたの子、従者である」と囁く彼に、ヒストはすべてを明らかにしたのである。
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