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書籍

ハッシュドの破滅

賢きレラミル著

アポクリファは定命の訪問者にとって多くの危険を秘めている。この次元の一部の場所は恐るべきデイドラの獣によって守られている。他の地域は一見して無限に続く陰鬱な迷路のように見える。さらに別の地域で、旅人は実現しなかった運命の中に迷い込む可能性がある。不注意な者を自ら作り上げた世界に閉じ込める、不可思議な現実である。

しかしハッシュほど油断のならない、恐るべき危険は存在しない。

これはアポクリファの悲惨な真実であり、ハルメアス・モラとのあらゆる取引の核心に待ち受ける罠である。定命の者が知るべきでない物事を知るためアポクリファに来る者は、自らの精神を危険にさらしている。

定命の者が自分の知性に収まるよりも遥かに大きな秘密を知ってしまうと、その精神の内容にずれが生じる。アポクリファ以前の人生の記憶、例えば大切な人々の顔や名前、定命の者をハルメアス・モラの領域へと導いた野心や欲望といった記憶は、徐々に失われていく。しかし知への渇望は定命の者を突き動かし、さらに先へと向かわせる。禁じられた知識の追求のため、自己を捨ててしまうほどに。

目の解読者はこの破滅の歌をハッシュと呼んでいる。そしてこの破滅に屈した者はハッシュドと呼ばれる。

ハッシュドは本来の素性や目的を忘れ、自らが抱える秘密の器でしかなくなった存在である。彼らは言葉を話せず、意思の疎通も取れない。大半は無言のままアポクリファの書架を徘徊し、周囲のものを一切気にかけることなく、さらなる難解な書物を探し求める。だが一部の者は均衡を崩して凶暴化し、出会うすべての者に襲いかかる。ハッシュドが何をするか知る方法はまったく存在しない。

学者たちの中には、ハルメアス・モラがその秘密を利用して定命の者をハッシュへと誘い込み、破滅へと導く邪悪な意図を持っていると信じる者もいる。私の考えでは、ハッシュドは悪意でなく、無関心の犠牲者である。運命のデイドラ公は約束を守る。定命の者が何かを求めてモラと取引する時、モラはそれを与えてくれる。その何かが定命の者の破滅であるとしても。

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