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書籍

深き民の怖い話、第2巻

旅の作家、カッシア・ヴォルカティア著

次の物語は宿屋〈川の恵み〉で会ったリーチの斥候、マルコルのものだ。彼は感動的な音楽と青春と悲劇の物語を伝えてくれた。若い斥候の物語を信じられるかどうか、親愛なる後援者の諸氏にはぜひお読みになって判断いただきたい!

* * *
山の下からの音楽

リーチの民の大部分は、大昔に消えたドワーフが残した、永遠の恐怖が付きまとう遺跡を忌避するが、例外もいる。マルコルとエサナという2人の若いリーチの斥候はある日、クランの誰も行きたがらない場所を探検しようと決めた。彼らは名を挙げるため、山の下にあるドワーフの遺跡に向かったのだ。こうして2人はいくつもドワーフ都市の奥深くへ進み、オートマトンやさらに凶悪な敵と戦って、勇気を証明しようとした。

こうしてドワーフ名は知られていないが、リーチの民がダークホロウと呼ぶある遺跡の深部を探検していた時、エサナが最初に山の下からの音楽を聞いた。マルコルは全力で耳を澄ませたが、何も聞こえなかった。しかしエサナは嵐のように大音響で音楽が聞こえると言い張った。彼女はどこにいても聞こえると言った。

エサナは何度もマルコルにその音楽を説明しようとした。それは真鍮の鳥が暗闇の中で奏でる歌、歯車と岩の交響曲、蒸気と炎の賛美歌、などだった。しかしエサナは山の下の音を辿り、マルコルも彼女に付き従ったが、2人ともこの謎めいた音楽の源を突き止められなかった。

マルコルが私に語ったところ、そのうちエサナは音楽に執着するようになり、マルコルと共にキャンプに戻った後も音楽を口ずさんだ。彼の話では、眠っている時もやめなかったという。彼女の口笛は美しいものではなかったが、奇妙に心に響き、今になってもマルコルはエサナの無味乾燥な口笛を頭から追い払えないという。

エサナは毎日ダークホロウへ行きたいと主張し、クランの斥候としての任務を放棄するようになった。そのうちクランのウィッチマザーがマルコルとエサナの2人にダークホロウへ行くことを禁じた。その次の日、ウィッチマザーの怒りを買いクランから追放される危険まで冒して、エサナは最後にもう一度ダークホロウへと向かった。

ウィッチマザーはマルコルがエサナを追うことを禁じたが、彼は禁を破った。幼馴染の友人は獲物を見つけるまで戻らないと確信していたからだ。マルコルはエサナが自分にしか聞こえない山の下の音楽を探して、正気を失うのではないかと恐れた。もう二度と帰れないほどの奥まで進んでしまうのではないかと。マルコルは遺跡の外でエサナの荷袋を見つけ、できる限り奥深くまで進んだ。

マルコルの捜索は悲劇に終わった。最終的に、彼が幼馴染のエサナに関して見つけたのは、ダークホロウの最深部に置かれた、笑顔が落書きしてある動物の皮だけだった。マルコルは悲しみに沈みながら、絵の意味を完璧に理解した。彼は悲痛な気分になった。

「見つけた」と落書きされた絵は言っていた。それはエサナが親友のために残した、最後のメッセージだったのだ。

それ以来、エサナの姿が見られることは二度となかった。

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