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書籍

レッドガードの歴史と英雄たち 第2巻

フランダー・ド・フンディング・ヘル・アンセイ・ノ・シラこと、フランダー・フンディングはハイデザートの砂漠の辺境に生を受けた。「フンディング」は生誕地近くの地名、「ノ・シラ」は「高貴な人物」や「高貴な生まれの者」という意味、そして「ヘル・アンセイ」は剣の聖人たる彼の称号だ。

フンディングの祖先は有史初期、ハイデザートで職人や秘術師として暮らしていたところまで遡れる。彼の祖父はエルデン・ヨケダことマンセル・セスニットの家臣で、セスニットの暗殺前まで統一のための多くの戦いを率いていた。

彼が14歳の時に父親が反乱の1つで命を落とし、フンディングは母親や4人の兄弟を支えることになった。剣での武勇はその人生を楽にも難しくもさせた。仕事の上ではガーディアンや護衛として大きな需要があった。だが彼の評判が高まったために、戦では彼を倒して手軽に名声を得ようという者たちが次々と現れた。

30歳になるまでに彼は90回以上の決闘で相手を殺し、勝利を収めた。卓越した技能と経験を有する彼は、剣において事実上無敵となる。先祖代々の才能による本物の剣での技を使うことをやめ、シェハイという「魂の剣術」を使うようになっていた。

ソードシンガーは誰しも厳しい訓練と戦の神々への信仰、そして剣術を通して、霊剣を生み出す修行法を身につける。これは単純な魔法のようなもの、思考のみで剣を形作るという精神的な技術である。ソードシンガーは精神統一により剣を生み、剣はその手に現れる。その剣は大抵はほのかな光である。ぼんやりとして実体がなく、おそらく美しく、剣の道や神々への愛情の象徴であるが武器ではない。しかし優れた能力と感性を持つアンセイたちや魔法の才能に長けた者は、重圧のかかる状況下で光や空気どころではない霊剣、シェハイを作り出せる。これは向かうところ敵なしの強さで、持ち主の精神を奪わねば取り上げることもできない武器である。

シェハイはフンディングの武器となり、彼はこれで土地を荒らす悪党や怪物たちを殺した。ついに90回目の決闘で邪悪なジャニック卿と従者の7人のリッチを倒した彼は、自分が事実上無敵であると確信する。そしてフンディングは己の剣術の哲学を明確にすることに取りかかった。60歳で世捨て人として高地砂漠の山地にある洞窟で暮らしながら、彼は己の知識を円環の書に書き記した。

その年フンディングはこう考えていた。帝国の多くの戦いに参加しあらゆる敵を倒してきた自分はもう、死ぬ準備ができていると。彼は洞窟に引きこもり、自分の戦術や秘術的な考えを他のソードシンガーたちと分け合うために記録していた。シンガーたちが彼を見つけたのは円環の書の完成後だった。彼はこの世を去り戦の神々に加わろうと、辞世の詩を作っていた。

60歳にして頑強であった彼はもう人生をやり遂げたと考えていた。だが仲間のソードシンガーたちは、それまでにないほどフンディングを必要としていたのだ。

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