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書籍

ヒュー王子と二人三脚

次席高官ハフジファー・アルヤス著

「ハフジ!」と、私の事務室に飛び込んでくるなりヒュー王子は呼んだ。
「刃の祭典の準備は全部できてるか?」

私は立ち上がった。
コルヴス・ディレニの「召喚の原理」を羊皮紙で隠すためである。

王子の目はぎらりと光った。
「またディレニを読んでるのか、ええ?私が宮廷での魔法をどう思ってるか知ってるだろう!」

「こ…これは私のものではないのですよ、殿下!これは給仕のジェンゲシュから没収したのです」
私はそう言ってあいまいに笑った。

「ふむ。それでお前はどうして次席高官の正式なターバンを着けてないんだ?」

私は机の隅に置かれたダサいマゼンタと緑色の頭飾りに目をやり、顔をしかめないように努力した。
「帽子をかぶるには暖かすぎますので、殿下」

「何を馬鹿な、今は蒔種の月の真っただ中じゃないか!
とにかく、私は祭典の準備が計画通りに進んでいるかを知りたいのだ。
我が民がパーティー好きなのは知っているだろう!」

私は首を振った。
「彼らはレッドガードです、殿下。
パーティーにはあまり行かないでしょう。
というか、まったく行きません」

「それがこれから変わるのだ!
さあ、ラクダの尻尾刺しの準備はできているのか?」

「できています、殿下。
というか、できるはずです。
モラドの足の添木が取れればすぐにでも」

「血まみれリンゴ食いゲームは?」

「水槽、果物かご、タオルとすべて西の中庭に並べてあります」

「街の衛兵対抗二人三脚レースは?」

私は唾を飲みこんだ。
「実は、そこが問題なのでして、殿下。
というのも、衛兵たちの誰一人としてその催しに参加を申し込んでこないのです。
どうも…気が乗らないようなのです。
なにせ、彼らは去年のレースの後で、殿下がザクド伍長に与えた罰を覚えているからなのです」

「あいつがずるをしたんだ!懲らしめるしかなかったんだ!
それに、なんだかんだ言ってあいつの足の指の大半はまだ残ってるじゃないか」

「だとしても、彼らがやるとは思えませんよ」

「ふーむ」と、王子はいらいらした様子でひげをいじった。
「あいつらが足をほどくようなずるをしないと確実にわかるようにしたらどうだ?
やろうとしてもできないようにするんだ」

これはよくない。
要するに王子にはいい考えがあるということなのだ。
そして王子にいい考えがあるというのは、いつだって悪いことなのだ。
「どういう意味ですか、その"やろうとしてもできない"というのは?」

「はっはっは!ドーラン、こっちに来るんだ」
と王子は呼びかけた。
王子のボディガードは頭を低くして鴨居をくぐり、広間から入ってきた。
「ハフジ、あのヨクダの壺の前に立つんだ」
とヒュー王子は言った。
「ドーラン、次席高官の隣に立て」

私は肩をすくめ、位置についた。
ビッグ・ドーランが私の隣に立つと、彼の背丈は私より頭一つ半高かった。
ヒュー王子が時代がかったしぐさで両手を掲げたので、私は気がついた。
恐るべきことに、彼は呪文を唱えようとしていたのだ。
だが私が抗議する前に、それは行われてしまった。
呪文は発動し、マジカが私に押し寄せて、自分の左足がドーランの右足に結合するのを感じた。
「ひどい!」
私は叫んだ。
「殿下、何をするんです!」

王子は満足そうにひげをなでた。
「コルビュス・ディレニを読めるのは自分だけだとでも思ったのかい、ハフジ?
コロンの強制召喚から束縛の一節を切り取っておいたのさ。
そしてそれがデイドラの意思以外のものを束縛するためにも使えることを発見したんだ!
すごいだろう?」

私はぽかんとして彼を見つめるだけだった。
そのうちに、ビッグ・ドーランは魔法で結合させられた我々の足を見下ろし、唸り声をあげてから、前に足を踏み出そうとした。
私は倒れないように彼の腕をつかまなければならず、それでも私たちは両方とも引き倒されそうになった。
ドーランは頭を振った。
「これはひどい。マスター。気に入りません。
元に戻してくださいよ、マスター」

「そうか、いいだろう。ほどけろ!」
と王子は言って呪文を逆転させたが、愚かしくも格好をつけるためだけのしぐさを加え、それにマジカを注ぎ込みすぎていた。
ドーランと私は離れて空中に浮かび、それぞれ部屋の反対側に叩きつけられた。
そして我々の背後にあったヨクダの壺は爆弾のように砕け散った。

すると突然、砕け散った壺の上に渦巻く雲が現れ、うつろな鳴き声が響いた。
「自由!自由だ!あの臭い壺の中に無限とも思える長い時間、閉じ込められてきたが、もう自由だ!」
雲は素早く、空中に浮かぶ装甲に覆われた胴体を、兜をかぶった頭と、それぞれが巨大な三日月刀を握った4本の腕を結合させた。
「今こそ、定命の者の世界に復讐する時だ!」

三日月刀は威嚇するようにくるくると回り始めた。
私はドーランに目をやったが、彼は私のものだった大理石製のモルワの胸像に頭から突っ込んだらしく、まだ気絶していた。
「殿下!」
私は叫んだ。
「呪文を使うんです!あいつが私たちをオードブルにしてしまう前に、束縛してしまえばいい!」

ヒュー王子は恐怖に目をむいた。
「で…できないんだ!さっきの解除呪文でマジカを使い切ってしまった!
お前が頼りだ、ハフジ!」

私はしゃがみ、三日月刀が2本頭上をかすめていった後、走って自分の机の後ろに隠れた。
奴は私と扉の間にいた。
確かにこいつを束縛できるのは私しかいない。
だが私はもう何ヶ月も呪文を唱えていなかったのだ。
三日月刀がヒュー王子の黄金のフェルト帽の飾りを切り落とし、王子は悲鳴をあげた。
「コロンの牢獄だ、ハフジ!それしかない!」

「しかしそれには器が必要です。壺は砕けてしまったじゃないですか!」

「これを使うんだ!」
と言って王子はマゼンタと緑色の下級高官用ターバンを私に向けて放った。

三日月刀が3本私の机に飛んできて、机を粉砕したところで、私はターバンを逆さにしてコロンの永続牢獄を唱えた。
「嫌だあああ!」
忌まわしい帽子の中に吸い込まれながら、悪魔は叫んだ。
「髪油の匂いは大嫌いだ…!」

そして奴はいなくなった。
私はまだ震えていたが、ヒュー王子はまばたきをし、深呼吸をし、にっこりと笑った。
「まあ、そんなにひどいことにはならなかったな。
少なくともアイアンレガッタの時とか、あのペットのトク・ガーヴァの時に比べれば悪くなかった!
さて、何をしていたんだっけ?」

私はビッグ・ドーランを砕けた大理石像のくずの中から助け起こした。
「衛兵対抗二人三脚レースを取りやめにすると言っていたところです、覚えていますか?」

「お前が言うならそうだったんだろう、ハフジ。
お前の言うことはだいたい正しいからな」。
彼の顔が輝いた。
「そうだ!血まみれリンゴ食い競争の後、負けた者の頭のリンゴをクロスボウで撃たせるんだ!
ああ、それと…そのターバンは捨てておけよ」

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