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書籍

リーチの政治

第二紀578年、アルドの行政官、執政官カルデア著

アルド・カダッチの指示により、私はマルカルスでリーチの民に仕え続けています。帝都からマルカルスに送られた理由は、レオヴィック皇帝自身がマルカルスを助け、シロディールとリーチの架け橋になるよう望まれたためです。現在ルビーの玉座に座る者から追加指令は受けていませんが、私は退出して故郷に帰るものと考えていました。アルド・カダッチが私の行政管理能力を保持したいと望まれたため、私はここに残っています。新しい皇帝が興味を持たれた場合に備えて、職務中に学んだことをここに記録します。

まず、リーチは1つの国ではなく2つの国だと考えたほうが良いでしょう。マルカルスと荒野です。伝統的に、誰であれマルカルスを統治する者は荒野に対してほとんど権力を行使しませんが、一方で荒野の強力なクランの雑然とした集まりには、リーチの都市を支配する力も意思もありません。マルカルスが弱い指導者の統治下にある時――もしくは時々あることですが、完全に統治者が不在の場合は――影響の輪が縮小します。強い統治者がマルカルスを掌握している時は、都市の力が近隣の土地にまでおよび、西リーチのクランは、名目上そうではなかったとしても、実際にはマルカルスの権威を認めなければなりません。長きに渡るリーチの物語は、領域を形作ろうとするマルカルスと、拡大する街の権威に激しく抵抗するマルカルスの外のクランの物語です。

リーチに対処する上でとても困難なのは、それぞれ独立したクランが自らを独自の政治機構だとみなしている点です。自由に襲撃し、取引し、戦争を起こし、クランが選んだ相手であれば誰とでも手を結びます。リーチとの間に長く続く平和を築くためには、数多くのクランと交渉しなければなりません。中には激しく憎み合うクランもあり、彼らは決して敵が受け入れることを選んだ平和を守ることに同意しないでしょう。驚かれるかもしれませんが、これは新皇帝のような外国の支配者に当てはまるのと同様に、マルカルスの支配者アルド・カダッチにとっても当てはまります。いくつかのクランの族長にとって、アルド・カダッチは単に並立した族長であり、彼に服従することは、他の同格の者へ服従するのと同じなのです。実際、彼らはアルド・カダッチをとても懐疑的な目で見ています。彼らのことも支配するつもりでいると信じているのです。

幸い、全てのリーチの民があらゆる人やものを敵にしたいと思っているわけではありません。アルド・カダッチは独立したクランに対し、思慮深く対応しています。彼はマルカルスの利益が直接脅威にさらされた場合にのみ行動を起こします――たとえば、シェイドフェザーのような敵意のあるクランによって、マルカルスへの道中が危険になる場合や、ボーンシェイパーのような境界にあるクランが隣接したクランに対し、全てのリーチの民を対象にして無差別に報復するよう促している様子が見られた場合などです。同様に、比較的規模の大きいクランの大部分はお互いに微妙な友好関係を保っています。無謀な対立を煽るクランは、高い確率で大規模なクランに対抗する他のクランの同盟関係を生じさせます。その上で、全てのリーチの民はマルカルスが中立地帯であるべきだと考えています。そこに行き、取引をしたいと願うあらゆる荒野の者に対して開かれているべきだと信じているのです。リーチの多くの人には、粗削りで用心深い平和のようなものが適しているのでしょう。

荒野での権力は主に有力なクラン(イーグルシアー、シックスフォード、リバーエルク、ソーンルートなど)が握っていますが、リーチには我々がアルド・カダッチの壁を越えてクランとの取引を望む時に考慮すべき慣習があります。「大族長」です。これは通常、味方と敵の両方から尊敬の念を勝ち得た族長が獲得する、ある種の「名誉族長」の称号です。大族長は、最も頑なで外国のものを嫌うクラン以外の全てのクランに対して、影響力のある道徳的権限を行使します。現在、大部分のクランはカニアーという元リバーエルクの族長を大族長として認めています。カニアーは紛争の裁定人であり仲介役で、現役時代は抗争の解決や同盟の修復などを行いました。敵対心の強いクランはカニアーを干渉者と見なし、どちらかと言えば軍事的な指導者の方に従いますが、彼女が死ぬか地位を手放すことを選ぶまで、荒野における彼女の声は大きな力を持ち続けるでしょう。

とても危険な狩りや強力な侵略者を撃退するなど、クランに協力が必要な場合は大族長が一時的な指揮権を得ます。脅威が去るまで、戦略と反応を調整するのです。

アルド・カダッチとマルカルスの民と働く過程で、私はこのような政治状況を理解しました。

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