蒔種の月、9日 またつまらない夕食。焼いた子羊と瓜。驚くべきじゃなかったらしい。アデーナは、日の出くらい行動が読める。正直言って、私の山羊たちの方が私よりも楽しい人生を送っていると感じる時がある。山羊たちを遺跡に連れてくるたび、まるで初めて来たかのような様子を見せる。うらやましい。だが、ナジャンとアデーナにとっては毎日に変化はない。同じ食事、同じようなぎこちない会話、同じように退屈な夜の営み。彼女に対して怒ることさえできない。テーブルの向こうを見て感じることは… 何もない。 蒔種の月、12日 信じられないものを見つけた。サンダルについた糞を落としている時に、小さい山羊のフスルが走り去った。追いかけていくと、遺跡の下にある地下室に入っていた。中は暗いが、ロウソクが必要なほど暗くはなかった。古い青い石が柔らかく光り、音を出していた。ただの冷たく濡れた石だったが、この場所に招いているような何かがあった。この場所を「フスルの洞窟」と呼ぶことにした。もっと詳しく探索するのが待ちきれない。古い本が何冊か、読まれるのを待っているのはすでに発見した。 一方で、またアデーナと味のない食事を我慢しなくてはならない。彼女はいつも、美味しかったかと聞いてくる。私の服を洗おうと言ってくる。ラプトガよ、お助けください。 蒔種の月、16日 何かを発見した。全てを変えてしまうような何かを。発見した古い本の1冊をパラパラとめくっていた時、ページの間に挟まっていた、かすかに光る何かを見つけた。それは護符だった。最初は単純なものに見えたが、泥と埃を落としたら、ものすごく価値の高いものに見えてきた。 その時、現実とは思えない女性が現れた。彼女は測り知れないほど美しい女性だった。彼女を見た時にほとんど話せなかったが、彼女はとても優しく、ただ微笑んだ。優しい、かすかな笑顔だった。心が休まって、自己紹介するまで長い時間がかかった。 彼女はアネクシールという名だった。遺跡にいる古代の精霊で、聖人のようなものだと思う。それ以上に偉大なものだと、私には感じられた。彼女の目はオアシスの水のようで、彼女の声はまるで… ああ、何てことだ。まるで詩人気取りだ! 認めるしかない… この霊魂と恋に落ちた。もし彼女が生きた存在だったなら… 自分のものにするのに。 蒔種の月、18日 苦しい。私が欲しいのはアネクシールだけだ。彼女への愛は日ごとに高まるが、一緒になることはできない。彼女は今も、二重に呪われた遺跡に囚われた、実体のない断片だ! 彼女に惑わされている! かすかに光る絹を身にまとい、実体のない指で私の肩をたどる。何て… 親密なんだ。彼女に私の気持ちを伝えなくては。彼女は、考える時間がほしい、と言った。すべてを台なしにしていないことを願う。 蒔種の月、24日 彼女は私を愛している! 思ったとおりだ! 愛しいアネクシールは、今日ついに私に愛を告げたが、彼女まで不幸になってしまった。神よ、救いたまえ。 蒔種の月、25日 彼女には計画があった! 愛しいアネクシールは地下室のホールを歩きまわって考えた。何日も考えていたかのようだった。彼女は私の元に来て、肉体を持つことはできるが、それには「器」が必要だ、と言った。入りこんで中で生きていくための誰かが必要だと。どういう仕組みなのかは分からない。分かっているのは、その容器は血の中にある魔法がある必要がある、ということだ。私は失望しかけたが、妻のアデーナのことを思い出した。彼女の中には、ずっと魔法がある。彼女の母親は「きらめき」と呼んでいた。きっとそれで充分だろう。充分に違いない。 明日、妻をここへ連れてこよう。
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