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書籍

マクステンの研究日記

<大半のページは黒焦げになっているか、触れると手が凍えるような分厚い氷に覆われている。判読できる記述はわずかだ>

知識を求めてモーサルまでたどり着いてしまったことには、不満の一つも言うべきだろう。古き良き田舎町と好意的に言われているが、他の旅人に勧められるものはない。川から漂う湿った臭いがあらゆる場所に染み込んでいる。それに私が到着した時から、ここの民がよそ者を好まないことがはっきりと分かった。敵意を示す者は誰もいないが、誰もが距離を保つ。私は構わないが。

しかし、私がこの小さな街にわずかな好意を持っている理由が三つある。一つは太陽が昇ると、製材機が休みなく動き続けること。製材機は途切れなく大きな唸りをあげるので、日中は眠りやすくしてくれる。闇の技に関する研究には暗くなる時間が一番都合良いので、日中休みを取れるのは歓迎だ。

さらに、モーサルは私が望んでいたとおり、死霊術の力が集中する。ここは死のエネルギーを発している。源泉を求める夜の狩りはもうすぐ成果をあげるだろう。そうすれば多少の調整を経て、吸収の儀式を始められる。この地域の力を一部でも抽出できれば、数年間は研究できる力が得られるだろう。

最後に、ここで素敵な友人と出会ったことた。彼女は街の首長の娘だ。モーサルを離れたことはないそうだが、世界についての奇妙な知恵と好奇心を私が認めるほど持っている。母親が元々ソリチュード出身らしく、意外なほど世間慣れしているのはそのせいかもしれない。だが何よりも、彼女は親切だ。私たちはかなりの時間を一緒に過ごし、自分の調査の性質も教えた。彼女は多くの者のように不快感を示さなかった。それどころか秘密を守ると誓い、可能なら手助けをするとまで言ったのだ。告白するが、私は彼女ともっと一緒に過ごせることを心待ちにしている。

* * *
…この街の周辺の死霊術の源泉へさらに近づけた気がする。昨晩、私は死のエネルギーの痕跡を求めて土を調べながら、東をさまよった。来週になれば、新月が環境の共鳴をうまく増幅するはずだ。その期間なら、中心を突き止めるのは簡単だろう。

森の中にいる間、私たちは遠くに立つ人影を目にした。我々を見張っていたが、動かなかった。フレイウェンはその女を「賢女」と呼んだ。呪術師を意味するここの言い方だ。到着してから初めて、私は不安になった。今になって詮索好きの老魔女に妨害されるなどまっぴらだ。

そう、それからフレイウェンはこの旅に同行してくれた。家からこっそり出て来たところが可愛らしいと思う。彼女がいると気分がいい。一緒に星の下を歩いていると、特別な気分になるのも無理はない。

* * *
…ここはクジェンスタッグ遺跡と呼ばれている。私が聞いた相手は、全員がその歴史について何も知らなかった。だが遺跡に強大な力が込められているのは間違いない。エネルギーの量を増やすため、ラノヴォの吸収儀式を調節しなくてはならないが、計算は簡単なはずだ。

フレイウェンが誘引体になることを同意してくれるかもしれない。狼など付近の野生生物を使うつもりでいたが、この地で生まれ育った民のほうが効果があるだろう。ラノヴォは誘引体に負の影響はなかったと言っていた…

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