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書籍

マルケストの日記

アポクリファ大蔵書庫の一区画でしかないとはいえ、果てしなき保管庫は常に謎に満ちた迷宮だった。混乱の源であり、変化し続けるこの領域の性質に適応していない者にとっては罠でもある。保管庫の広大な空間内に散在するそれぞれの場所は、互いに大きく異なるように見えるが、それらを繋ぐ通路を気づかないうちに通ってしまうことが多いため、入口へ戻ることはほとんど不可能になっている。

モラの書記たちは裂け目を最後に訪れた時、果てしなき保管庫のねじ曲がった道を地図にしようと試みた。彼らはこの場所の内的構造の理解へ向けていくらかの成果を挙げたが、全体を地図に記す前に彼らの裂け目は閉じ始めた。彼らのうちの幾人かは、未だに回廊をさまよっているかもしれない。

以上から言えるのは、ここが恐るべき場所だということだ。最近、保管庫はかつてないほど乱雑さを増していると感じる。私は最近の調査旅行の時、書記たちの地図を携えて奥地まで進んだ。保管庫にある無数の区画を結ぶ門のどれ一つとして、地図には合致していなかった――以前にはなかったことである。これは私の経験的な推測にも一致している。果てしなき保管庫内の場所がひとりでに位置を変えるというのは言い過ぎかもしれないが、ある程度はそれが現実に起きているのではないだろうか。より正確には、各地の間に新しい連結を作り出す、超自然的な扉が存在するのだと思われる。比喩的に言うならば、保管庫の棟同士を結んでいる扉がランダムに開き、施錠されている。それに加えて大工たちが設計図を変えたり、新しい別館を作ったりしているのだ! 要するに、ここでは何か不思議なことが起きている。私はこの謎を究明したい。

***

今日の私の旅は純粋に学問的なものだった。保管庫に変化し続ける性質が存在することは確認したが、私はさらに姿を変える広間に対処する戦術をも考案できた。索引と整理者たちのおかげで、私は広間を通過するのに多少面倒な思いをする程度で済んだ。大成功というほどではないが、少なくともこの不可解な場所の研究を続けるという、最大の目的に再び取り掛かることができる。

今日、私は「捉えがたき旅人」という、ささいな歴史記述が記された本を探した。著者はカルニウス・ミッソニーという、これも大して重要でない人物だ。全体として、この本が果てしなき保管庫の正体についての手がかりを与えてくれるとは期待していなかった。しかし意外なことに、この本は索引の記録から消えていたのだ。

整理者ジュンが橋の近くの棟でこの本を発見したので、私は軽くページに目を通してから、長い徒歩の帰り道に着いた。本はこの辺りに散乱している大半の本と似通った内容のようだった。〈面影〉の旅についての、多少の脚色が施された歴史記述である。果てしなき保管庫に収められている本の多くは、より最近の出来事についての歴史記述のカテゴリーに属している。

さて、多くの記述は出来事の基本的な順序について意見を一致させているが、細かい内容については見解が分かれている。例えば、ある本はドラゴンのジョーラーマーが炎を吐くと述べ、別の本は毒の煙が雲となって口から吹き出されると主張する、という具合だ。これらの記述間の差異のため、真実には一定程度の曖昧さが残っている。

しかし、私は自分なりの仮説を立てている。索引のカタログに「捉えがたき旅人」』に関する情報が不思議なくらい欠けていることはすでに述べた。これまで私が出会った本の中で、情報が欠如しているものはこれが最初でない。自説を裏付けるためにまた本を探しに行くことはせず、仮説はここに記しておき、また別の機会に調査へ赴こう。私の仮説は、索引のカタログにある情報が制限されている本が、〈面影〉の歴史に関わっているというものだ。この説が正しいとしたら、それは何を意味する? そして、どうすればそうした本をすべて見つけられる? それらの本すべてを記録に収める方法が存在するはずだ。

***

私はあるものに出くわしたが、あれは幻視、それとも小次元と言うべきだろうか。いずれにせよあまりに奇妙だったので、合理的に説明することはできそうにない。

私は果てしなき保管庫へ旅立った。またしてもこの場所の歴史の調査を進めるため、ある本を探しに行ったのだ。だが今回は、ある区画の端に到達した時、1つではなく2つのポータルが出現した。私はこの場所の危険について健全な理解を有している。通ったことのある道から逸れることの危険はわかっている。今は特にそうだ。だから、自分がなぜ2つ目のポータルに足を踏み入れたのかは説明しがたい。その瞬間から、私の体験は言葉に表しがたいほど奇異なものに変わった。

私の目は頭蓋骨に収まらなくなった。通常の限界を超えて引き延ばされたため、今でも目が痛む。そして私の歯はまったく小さすぎると感じた。吐き気がするほどの量の砂糖を感じ、あらゆるものに甘さがこびりついていたことを憶えている。私が意識を取り戻し、かろうじて大切な書類を台無しにしないよう地面に向かって吐くだけの節度を保とうとしている間も、甘さは私から離れなかった。それは今でもここにある。口の裏側にハチミツの飴が張り付いているような気分だ。手足も痛む。まるで長い距離を走ったような感じだったが、私は出発地点に戻ってきただけだった。

この記録を書き終えたら眠ろう。長い休息を取れば、あの体験の意味もはっきりするかもしれない。

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