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書籍

鷲の影の生活

暁星の月、1日:
新たな年、新たな始まり。昨夜、シルネは私の婚約者になることを承諾してくれた! 私はマティースン一の運の良いエルフだ。すでに鍛冶場を使えるよう、ヨンディンに手配した。私は父の古い剣を溶かし、マーラの指輪の土台にするつもりだ。マティースン鋼は兵士たちにとって十分満足できるものなんだろう? 私の最愛の人にとってもそうだろう。

薄明の月、3日:
伝令が島中で声を上げている。新たな女王が誕生した! それで、私たちは同盟か何かの一員になった。よりによって、ウッドエルフとカジートとの同盟だ。「アルドメリ・ドミニオン」と呼ぶらしい。誇らしく思ったが、父は文句を言うだけだ。父は「あのような連中」を島に入れては、仕事に悪い影響がでる、と言っている。

薄明の月、10日:
夜中に、シルネと一緒にお忍びでスカイウォッチに行った。道端で寝たのがとてもワクワクした。まるでギルドの戦士だった! 祝賀を告知するちらしは島中に溢れ、こんなことは見過ごせないと私たちは思った。老いたエルフにこっぴどく怒られることはわかっている。だけど、いいんだ。女王、たてがみとボズマーの樹の従士をこの目で見る機会を見過ごす? ありえない。

薄明の月、11日:
今日が何かの兆候だったのであれば、父は正しかった。パレードは素晴らしかった。女王が門まで続く道を、海兵隊のファランクスを率いながら歩んだ。その後、樹の従士の狡猾な密林のレンジャーがやってきた。ヴァインダスク、と誰かが言っていたかな? それから、髪を編んだたてがみたちが来た! カジートの戦士は素晴らしかった。

私の小銭入れを盗もうとしていた、あの毛むくじゃらのスリよりも素晴らしかった。逃げる前に捕まえようとしたが、カエルレースに熱中していた港の職員たちの中へ紛れ込んでしまった。そのまま消えてしまった。シルネは大丈夫だと言ってくれた。計画したよりも早めに出ればいいと。ちくしょう。彼女をがっかりさせたくない。

薄明の月、17日:
ちくしょう! シルネとスカイウォッチから戻ってきてから、すべてがごちゃごちゃだ。父は私たちがこっそり行ったことをカンカンに怒っていた。あのスリにどれだけ小銭を盗まれたかを教えたら… 鍛冶場の仕事を学んでいたとき以来、あれほどあの老人に殴られたことはなかった。

それで、数日前、私たちみんなは鍛冶頭の事務所に連れて行かれた。コンダリンから、同盟のおかげでエルフの商人たちが「あの連中」を雇えるようになったという報告を受けた。「彼ら」に仕事を与えれば、サルモールからお金がもらえるらしい。

それで、彼は父の契約を破棄したんだ! 鍛冶場で何十年も働いたのに、いまでは猫人間と食人族が代わりに仕事をしている。すべてはこの忌々しい同盟のせいだ。父は自分のことよりも、鋼のことを心配している。彼らはやり方を知らないと言っている。天の星よ、何が起きているんだ?

蒔種の月、2日:
私の人生は台無しだ。今は逃亡の身だ。私が愛していたすべての知人に嫌われている。「同盟」と微笑む女王なんかクソくらえ!

バトルリーブの採用担当者が街にきてからすべての終わりが始まった。彼はドミニオン軍への志願者を探していた。誰も志願しなかったとき、彼は徴兵する権限を持っていると言い放った。彼は私とシルネの弟の肩を叩いた。それと、双子のタレリルとタナリルも捕まえた。他のやつらの隊列に押し込まれて、道を歩かされた。

1マイルもしないうちにタナリルがキレた。彼は狂い始めて、ダークエルフとは戦えないと叫び始めた。やつらにクモを孵化させるために身体を使われると。彼は逃げようとした。私と他のやつらも、一緒に逃げた。

私はシルセイレンの近くの洞窟で隠れている。父は一文無し。私は婚約者に裏切り者呼ばわりされるだろう。忌々しい猫と小さなエルフに島を乗っ取られている。そして、軍隊が子供を最前線に連れている。これは私が育った故郷ではない!

蒔種の月、5日:
私は夕飯を盗まなければいけないほど落ちぶれたが、もちろん捕まった。夕暮れ後にシルセイレンに忍び込み、おいしそうな白魚の香りが漂っていた。採用担当者が街に来たあの午前中、シルネの母親が作ったスパイス入りのパンを食べて以来、私は何も口にしてなかった。

街に忍び込み、地元の宿屋のにおいをたどった。どうやって調理場に入ろうか考えていたときに、大きな手が私の肩を叩いた。キャノンリーブの部下だった。彼は私が何を企んでいたかはっきりわかっていた。まるで、街に忍び込んでからずっと私のことを監視していたように。今は、リーブの邸宅の近くにある牢屋に座りながら、裁きを待っている。少なくとも、ここでは手記を書かせてくれる。

クソくらえ、アイレン! クソくらえ、ドミニオン!

蒔種の月、10日:
今までの私の人生は終わった。ベールの下で新たな人生が始まった。ヴァラノという誇り高き男であるキャノンリーブ自身も、ドミニオンの下での人生に疑いを持っていたらしい。彼は女王と親友だったらしいが、歳月が彼女を変貌させてしまったと心配している。

ヴァラノはベールの継承者という団体の一員だ。彼らは自由を得るために戦う人たちだ。彼は難しい選択肢を選ぶことを辞さず、外国の影響が我らの土地を汚すのを止めようとしている。

私はあのシルセイレンの地下にある牢屋から連れ出されたとき、重労働を覚悟した。それどころか、私は新たな家族を見つけた。ヴァラノは私が抱える問題のすべてを知っていると言ってくれ、私がドミニオンの採用担当者に連れて行かれたことも知っていた。彼は私を助けてくれると言った。そして、私が自分を助けられるように手伝うと。

私はそのようにする。

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