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書籍

ブラヴァム・リサンダの日記

蒔種の月12日
実験は進展を見せ続けている。被験者の心に複数の持続的な幻惑を定着させることに成功した。もっとも被験者はまだアミュレットを装着していなければならない。被験者に対し、彼の魂はアミュレットに結びつけられており、取り外せば即死すると信じさせることは容易だった。

幻惑の完全なコントロールはまだ得られていない。小屋が木ではなく石で作られていると被験者に信じさせようとした時、彼はそれがスイートミートで作られていると考えるようになり、私は彼が食べようとするのを止めなければならなかった。各人の体質はいまだ一定の望ましくない影響を及ぼしている。

栽培の月17日
ついにやった! 作業を阻んでいた2つの問題を、1つの優雅な方法で解決することができた。私が編み出した支配呪文の正確な組み合わせによって、今や幻覚の完全なコントロールを(持続性も同時に)費用のかかる付呪なしで実現できた。

これは時宜を得た発見だった。というのも被験者は最近、現在の段階の実験を続けるよりもアミュレットを外すほうがいいかもしれないと示唆したからだ。これからは追加の被験者を探してもいいだろう。

真央の月5日
私の地下室に居住している3人は、自分たちがお城に住んでいると信じている。彼らは貴族の姿をするようになったが、これは彼ら自身の空想である。私は彼らの自己知覚に変化を加えようと試みてはいない。この共有された幻惑はすでに2週間持ちこたえ、長期にわたる尋問の中においても、他の幻惑の場合のように消滅の兆候を見せていない。

私は未だに自分でこれらの幻惑を試してみることを躊躇しているが、その気になれば抜け出せるだろうという自信はある。これまでのテストでは、私が観察できると期待していた具体的現実の性質における障害は明らかになっていない。さらなる被験者が必要かもしれない。

南中の月10日
本日、またひとつ興味深い展開があった。私はウェアウルフが城に暴れこみ、被験者たちのうち1人だけを、他の者たちには手の届かない位置で襲うという概念を導入した。私がその被験者を元に戻し、目覚めさせた時、最初にウェアウルフを発見したのは彼ではなく、別の被験者だったのだ!

どうやらどの被験者も獣を知覚していたと思われる。このことについてはさらにテストを続けなければならない――この幻惑は独立の実在になったのか、それとも私が何らかの仕方で彼らを結びつけてしまったのか? もうひとつの世界が侵入してきているということなのだろうか? 大興奮だ!

南中の月23日
私はコントロールを失いつつある。まるで何か外部の力が介入してきているようだ。自分が紡ぎ出した呪文の底で奇妙な底流が発生し、被験者たちの心に抵抗を生んでいるのを感じる。彼らは理解不能になってきており、共同で作業するのが難しくなってきている。

1人は隅に座り込み、体を前後に揺らしながら、あろうことかディベラに祈りを捧げている。もう1人はひどく自傷してしまったため、取り除かなければならない。これまで、彼らの精神の健全性について疑問を抱いたことはなかったのに。いったい何がこのようなことを引き起こしているのだろう?

収穫の月2日
大いに驚いたことに、今朝地下室からすべてが消えていた――簡易な設備や物資、そして最も困ったことに被験者たちまでも。地下室の壁や天井や床は今、城の大広間を描いた壁画で完全に覆い尽くされている。

被験者たちはどこにも見当たらないが、最も奇妙なのは1揃いの絵の具と1本の絵筆が隅に転がっていることだ。何らかの不正な企みが行われたのだ。もっとよく調査してみなければならない。

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