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アイスエルフ: 事実か空想か?

アイスエルフは存在するのか? この奇妙な生物について聞いたことはあったが、つい最近までただの神話だと思いまともに取り合わなかった。しかし今、私はアイスエルフに会ったと確信している。

従兄弟のクヌデクと一緒にアモル砦の南で不毛な鹿狩りをしていたときだった。クヌデクがウサギよりも大きな獲物を仕留めると意気込んでいたのだ。ハチミツ酒を何本か飲み勢いづいたところで、彼は日が暮れるまでには上質のシカを手に戻って来ると言い、弓を振りながらどこかに走って行った。夜になったので、まもなく疲れて帰って来るだろうと思いキャンプを作ることにした。

ハチミツ酒をもう1本飲みきり小さなテントの中に潜り込んだとき、雪が降り始めた。それからほどなくして、奇妙な獣が近くの森の辺りでのたうち回っている音が聞こえた。私はクヌデクだと思い呼び掛けた。すると不気味なうめき声だけが聞こえたので、腕毛が逆立った。

弓を掴み取り、その生物との対決を決意した。テントから飛び出るときに、突風によって雪が舞い上がった。私はテントにもつれて前のめりに倒れ、小さなたき火に手が当たってしまった。驚いて叫び声を上げると、その生物も驚いてキャンプの近くで立ち止まった。

その生物は森に棲むトロールにしてはあまりにも小さかった。奇妙な音を立てたので怒鳴りつけて追い払おうとした。雪が降っていた上に火傷の傷みで涙が出ていたためその姿はよく見えなかった。その生物はさらに意味不明な音を立て続けていた。

人生最大の恐怖の中、死に物狂いで火傷を負っていないほうの手で熱い燃えさしを掴み取り、その生物の頭をめがけて投げつけた。私が熱さのせいでその生物よりもさらに大きな声で叫ぶと、その生物はのたうち回って雪の吹きだまりの中に倒れた。私はなんとか立ち上がり、その生物も必死で立ち上がろうとしていた。その生物は青白い肌で背が丸まっていた。襲ってはこなかった。私は手の痛みのせいで言葉を発することができなかった。

傷みは激しかったが、急いで逃げることにした。アモル砦に向かって走った。幸いにも砦に戻る途中の兵士の一団に遭遇した。彼らが治癒師のところに連れて行ってくれ、手の治療を受けることができた。クヌデクは数日後に姿を現した。迷子になり倒れて腕の骨を折った後、悪党の魔術師に襲われファイアボールを何度も投げつけられたらしい。アイスエルフを見れなかったことを残念がっていた。2人とも回復したら、また探しに行きたいと言っている。

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