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書籍

ダイアウルフ調教の手引き

クヴァッチの獣使いシェルガ・グラブル著

ダイアウルフを見たら、君は笑うか? 奴らは普通の狼の体を大きくして、頭を悪くしたものだと考えるか? だとしたら、君は馬鹿だ。ダイアウルフは狡猾で危険だ。彼らにとって君の笑いは「次に君たちのお腹に入るのは私だぞ」と言うのと同じだ。シェルガは一度だけ、ダイアウルフに向かって笑ったことがある。今、シェルガの耳は一つだ。

シェルガはもう馬鹿ではない。今シェルガはダイアウルフの旗を持つ街、クヴァッチの獣使いだ。だからシェルガはダイアウルフを調教するために多くの時間を割いている。

ダイアウルフを調教するのは不可能だと思うかもしれない。それは真実だ。肉食獣を調教することはできない。完全には無理だ。だがもしシェルガがこの本を「ダイアウルフに自分ではなく敵を食わせるための手引き」と名づけたら、誰も買わないだろう。あるいは間違った理由で買う人が出るかもしれない。

1つ目。ダイアウルフは狼のように見える。狼のような動きをする。狼のような匂いがする。でも狼ではない。ダイアウルフはダイアウルフだ。

簡単な事のように聞こえるが、忘れるのも簡単なことなのだ。

狼は群れを必要とする。群れに入っていない狼は悪い。狼は孤立することを恐れる。努力すれば狼を調教できる。腹が減っていたら食い物をやる。君の群れに属していると狼に思わせればいい。

ダイアウルフには群れが必要ない。それはダイアウルフが1匹でまるごと一つの群れだからだ。ダイアウルフが悪くなるのは、そうなりたい時だけだ。孤立することは恐れない。ダイアウルフだからだ。

ダイアウルフを狼のように調教することはできない。腹が減っていたら、君が餌になる。自分さえいれば、群れは必要ない。君も自分が一つの群れであることを示さなければならない。君の群れとダイアウルフの群れが一緒に旅をして、より多くの食べ物を探した方がいいということを見せるのだ。ダイアウルフはこのことを理解する。なぜなら、ダイアウルフは狼の群れ一つと同じくらい食べるからだ。

2つ目。ダイアウルフの記憶は長持ちする。40年前のことをまだ恨んでいるクランマザーみたいなものだ。ダイアウルフに君を憎む理由を与えてはいけない。シェルガの姉妹グラルガは一度、食事を横取りしたダイアウルフに平手打ちをしたことがある。こうしてグラルガは親指を1本失くし、同時に礼儀を学んだ。グラルガはもうクヴァッチを訪ねてこない。

もしダイアウルフが君を憎むことがあったら、退いてはいけない。恐れてはいけない。憎いのはわかっていると示せ。憎しみを恐れないということを示せ。これは敬意を示すことになる。そしてたくさんの食料を与え、憎しみを抑えるのだ。

シェルガが思うに、これだからクヴァッチはダイアウルフを旗印にしたのだ。クヴァッチは忘れない。クヴァッチは敬意を払う者を尊敬する。そして民にたくさんの宴を与えれば、クヴァッチは憎しみを和らげる。

時として、ダイアウルフはそれでも君を憎む。その場合はダイアウルフを殺さなくてはならない。ダイアウルフのつがいのもう片方が見ている時に殺さないこと。そのダイアウルフも君を憎むようになる。人と同じだ。

3つ目。お腹をなでろ。耳の後ろをなでろ。でも耳の中はだめだ。尻尾と背中の境目をなでろ。尻尾は先端だけ! 顎の下もなでろ。

足をなでないこと。ダイアウルフの足はハイエルフと同じく敏感だ。それにダイアウルフは鋭い爪も持っている。君が足を奪い去ろうとしているとダイアウルフが考える時、そいつは君を憎むようになる。

最後に。ダイアウルフは賢いが、魔法を理解しない。だから魔法を使え。巻物は義手よりも安い。物語に出てくるようなやり方でダイアウルフを調教しようとするな。馬鹿になってはいけない。

シェルガの姉妹ボルガは、これはズルだと言った。魔法で従順になったダイアウルフはダイアウルフではないと。シェルガはボルガを罵倒した。ボルガは引かず、シェルガの尊敬を勝ち取った。するとボルガは、シェルガに茹でたサンダーバグの卵を持って来た。

シェルガは言う。ボルガさえ学べるのだ。君にもできる。

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