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書籍

ガヴロスの日誌

この方法で金持ちになれると信じているなら、私の主人達は本当に愚かだ。確かに、あの調合薬が生み出した物質は見た目も感触も希少な黒檀の鉱石にそっくりだ、だが黒檀ではない。腕利きの鍛冶屋がこれを使って道具を作ろうとすれば、すぐに偽物だと気づくだろう。

この件については何度もマスター・レサンに忠告してきた、調合薬そのものを売ることに力を注ぐべきだ。そのほうが賢いだろうし、同じぐらい利益にもなる。作成方法の翻訳には非常に苦労したし、調合も極めて正確に行う必要があるが、作るための試薬はそれほど珍しいものではない。私なら簡単にたくさん作れる。私が作った気体を、武器として使用しているところを想像してくれ! 大儲けできるはずだ。

マスター・レサンは反対している。彼によれば、買い手は黒檀が偽物でも気にしないというのだ。それを使って作った商品でも、いい加減な検査に合格できれば彼らは喜ぶだろう。黒檀は非常に希少で、なかなか手に入らない。私達という供給元がいれば、買い手は検査に通るような偽物を作り、それが偽物だとばれるまえに店を閉められる。どこかの兵士が黒檀の鎧が偽物だったために戦死したとしても、買い手のポケットから金が減るわけではない。

マスター・レサンが正しいのかもしれない。私は同じ種族の多くを突き動かしている、ありのままの欲望を過小評価してしまう傾向がある。このような素晴らしい調合薬を使って研究できることに満足している。いずれ、もっと有用な利用方法が見つかるかもしれない。

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