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書籍

ファエナリルの手紙

大好きな兄さん。

もう書くのはやめると約束したけど、こうやって伝えたいことを書き連ねていると、兄さんを失った痛みがやわらぐことに気づいた。

きっと喜んでくれると思うけど、アラドロスが私を庇護下に置いて、オーススウォーンの指導者であるダルズシュ・フォージファイアを説得して仲間にするという仕事を任せてくれた。オーススウォーンについては言いたいこともあるだろうけど、強い信念を持ってるのは確かだよね。彼女が私と同じように、ニルンを蝕む空虚さを感じていればいいなと思ってた。何かがあるはずなのに何もない、痛みを伴うぽっかりと空いた穴を。彼女は感じてた。驚いたし、一瞬希望があるかと勘違いしてしまった。でも、その感覚との付き合い方は私とは違ってた。彼女はそれをモーロッチの拳と呼んでいた。あのオークたちは自分たちへの慰めが、すべてあの除け者の戦士神から与えられると思ってる。

彼女の説得が一度の対話で済むはずがないことは承知しておくべきだった。私は別の手法を試した。アンセルミルによる愛する相手への拷問、レセルロスによる仲間との絆の利用。結局、残ったのは死んだオークたちと負傷した鍛冶頭だけだった。鍛冶のロッジにこもり、訓練場の熱を使ってダルズシュを回想者に転向させようとしたけど、あのオークは頑固そのものだった。彼女は鍛冶場の中で水もないのに想定した限界を超えて生き長らえ、しかも水入りフラスコを持つ私を嘲る力まで残していた。

オーススウォーンは見たことのないような熱情をもって私たちと戦った。誤解しないでほしいけど、オーススウォーンは評判ほど恐ろしくはない。でもすごく頑固よ。私は彼らの目の前で数えきれないほどの仲間を殺し、死体を焼いた。それでもオーススウォーンは転向を拒否する。どうしたら私たちの大義に同調させられる? アラドロスに考えがあるといいんだけど。じゃないとここでの収穫は、1本の杖とオークの死体の山だけということになる。

もうあまり期待はしていない。アラドロスが口を開くたびに、ダルズシュ・フォージファイアを殺せと指示されるような気がしてしまう。正直言って、自分がその指示を恐れてるのか歓迎するのかわからない。いずれにしても、訓練場に長居はしないでしょう。

それじゃ、また
ファエナリル

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