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書籍

ケシャルゴの日記からの抜粋

新しい書記、詩的な暗喩が許されるなら、羽ペンに付けた新しいインクの如き書記がケシャルゴの注意を引いた。ヴァリナ。魔術師ギルド出身だ。実戦的な魔法よりも、オブリビオンの多くの次元に関する学問的な知識の集積のほうに惹かれたからだそうだ。だが、魔法の才覚が劣っているわけではない。彼女は力のある妖術師だ。しかし知識に対する渇望が、入ったばかりの新人の中でも突出した存在にしている。

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以前言及した有望な新人、ヴァリナがスパイラル・スケインにある網の橋の地図作製を任された。地図作製の技術にはやや改善の必要があるものの、誰もが待ち望んでいたメファーラの領域に関する情報を数多く持ち帰った。それより重要なのは、彼女はスケインを移動するという難問に対応できたことだ(この者は苦戦している)。言うまでもなく、彼女は感銘を与え続けている。

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研究室を訪れたヴァリナに、地図と歴史的記録の価値における違いについて尋ねられた。ハーモーラーに仕えるためにどの専門技能を用いるか決断するつもりなのだろう。長い時間話し合い、彼女は新しいアイデアを得て研究室を去った。まったく、実に鋭敏な頭脳だ。

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ケシャルゴはヴァリナに代役を頼んだ。彼女の仕事はすべての分野において優れているし、裂け目の日時に関する専門知識はケシャルゴに匹敵する。この者は彼女にリフトマスターの仕事を引き継がせることを検討してみたが、ナクリのほうが適していた。ここだけの話だが、あの職位では彼女の才能が無駄になることはケシャルゴも認めざるをえない。彼女には裂け目を通じてやってくるものから館を守れるだけの素質と優れた魔法の能力はあるが、あの鋭い頭脳にあんなくだらない仕事をあてがってはもったいない。駄目だ。この者は自分の後任として彼女を育てる。

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アポクリファで何かが起きた。ヴァリナは向こうで何か不穏なことを見聞きしたらしい。というのは、宝物庫の中を空けに行った彼女が戻ってきて、なぜ介入しないのかとケシャルゴに尋ねたからだ。この者は八分儀を引用して観察という我々の務めについて説いたが、彼女はこの答えが不満だったようだ。今日の彼女は憂鬱そうだ。

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ヴァリナは介入の件を放置しないだろう。彼女はケシャルゴに出来事の内容を話すことを拒み、この話が出るとこの者を「愚かな老人」と呼ぶようになった。

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ケシャルゴは噂を耳にしている。我々の消極的な任務に対し、ヴァリナが不満を募らせている。

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館には新人たちがいる。ヴァリナのような魔術師と同様に戦士たちも。思いがけず彩られた部屋への裂け目が閉じた今、より多くの書記が必要だ。そのことが、この者の頭に重くのしかかっている。警告があまりにも遅く、遍歴の杖は私の手から遠く離れていた。ジリピフとケシャルゴはなすすべもなく裂け目が閉じるのを見ていた。この失態にヴァリナが憤慨するかどうかはわからない。ただ、自分に怒りを感じる。

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この者が視界に入るとひそひそ話が止まる。何が起きているのかわからないが、このようなことがあると、ほとんど残っていない毛が逆立つ。ヴァリナはさらに口をつぐむようになり、書斎で過ごす時間がかつてないほどに減少した。何が起きているにせよ、原因は彼女だ。ケシャルゴはそう確信している。公衆の面前で私を「愚かな老人」と呼び、他の書記たちに不満を伝えている。彼女は順番がくる前にマグナスタイラスのマントを奪おうとしているのではないかとケシャルゴは恐れている。遍歴の杖を隠さねばならない。彼女が入手を試みる前に。

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