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書籍

卵の番人の日記

今年こそは違う。
昔の人がやっていたみたいに、私はドラゴンソーンを噛み始めている。
調合薬と一緒にこれから何ヶ月も続ければ、きっと絆の準備ができるはず。
今年こそは私が選ばれる。間違いない。

大恥をかいてしまった。
ドラゴンソーンは刺激が強い。
息が酸っぱくなって、他の人が気づき始めてしまった。
ミンメでさえ私と話すのを嫌がってるみたい。
痛んだサラマンダーを食べちゃったのと言ったけど、これからはもっと目立たないようにあの草を噛まないと。

効いてる気がする。
鱗にも爪にも、前より艶が出てる。
多分、これはいい徴候だわ。
でも歯に黄色いシミが出てきてる。
醸造したスカルドルートを飲んで口を洗い始めた。
死にそうな味だけど、歯にはいいと思う。

キーナムが間違って私のスカルドルート茶を一口飲んで、気絶しかけた。
ウクシスで彼を看護しなくちゃならなかったから、暗くなるまでドラゴンソーン畑に行けなかった。
暗闇の中から女の人が近づいてきたけど、鱗がものすごく青白くて、月明かりの下では特にその色が目立っていた。
私は怖くて叫び出しそうになったけど、彼女は優しい声で話しかけた。
どうしてこんな夜中にドラゴンソーンを摘んでいるのかと聞かれて、どうしてかは分からないけど、本当のことを彼女に言った。
知らない人にどうしてこんなことを告白したのかは分からない。
知らない人だったからかもしれない。
憐れみの目で見られずにこのことを話せる相手は、村に誰もいない。
闇夜の中で、私はこの人とずっと話をした。
再び会うことになった。

この頃はほとんど眠れていないけど、仕方ないわ。
リー・ナカルは夜中しか会いに来られないと言っているし、私は一日中彼女に会うことばかり考えている。
あの人は私の痛みを分かってくれるし、耳を傾けてくれる人がいるって本当にありがたい。
家でこの話題が出た時にも、私は恥ずかしさを感じない。
リー・ナカルはヴィーシュクリールの一員、つまりゴーストの民。
彼女があんなに優しいなんて思っていなかった。
ブライトスロートはあの人たちと付き合わない。
付き合いのある部族は少ないわ。
彼らは卵を奪うから、追放者のように扱われている。
でも仕方がないのよ。
自分たちでは子供を産めないから、ヒストはあの人たちに他の部族へ行かせている。
なんて悲しい話なの。

リー・ナカルと絆の準備について話した。
ブライトスロートはゴーストと絆の権利の取り決めをして、彼らがもう卵を盗まなくてもいいようにできるかもしれないと言った。
彼女はありがとうと言ったけど、礼儀上そうしただけだった。
私たちの部族が味方になるなんて希望をほとんど持っていないのは目を見て分かった。
私たちの絆の儀式は特別なものだから、勝手にやればいいと彼女は言った。
私は強く言わなかった。
自分の部族にされたことを、彼女に対してしたいとは思わなかった。
彼女を憐れんだりはしない。

悲しい一日。
ヒストの下へ帰る卵が分かる日は、いつも悲しい日。
なぜヒストは他の卵を差し置いて、一部の卵を選ぶの?
明らかに病気の卵なら分かるけど、どの卵が孵って、どの卵が根の中に沈むのか、私たちはいつも予測できるわけじゃない。
あの子たちのためにできることは何もないとずっと受け入れてきたけど、リー・ナカルはそうじゃないって教えてくれた。
あの子たちも生まれることができるんだ。
卵を彼女のところへ持ってくれば、あの子たちを助けるために力を貸してくれると彼女は言った。
私の部族は卵がなくなっても気づきさえしないだろう。
あの子たちのことは、みんなもう諦めている。
でも私は諦めない。私はあの子たちが欲しい。
あの子たちは、私たちの子供になるのよ。

今夜、私はまたキーナムと一緒に働くことになっているけど、彼の飲み物にスカルドルートのエキス加えておいた。
夜の間に、卵をいくつか持ち出せるはず。
考えるのは恐ろしいけど、あの卵には私が必要なの。
怖いからって、諦めるわけにはいかない。

やったわ。
朝の番人が交代に来た時、私の肌は死んだ樹皮みたいに乾いていた。
私は夜のうちに卵がいくつかヒストの元に帰ったと言うと、彼らはただうなずいて受け入れた。
彼らが知らせに全く動じないのを見ると、喉がつかえる気分がする。

眠りに落ちるまでに何時間もかかった。
木の番人がやって来て私を告発するかと思ったけど、次の番をするために目を覚ますと、全ては日常どおりだった。
ヒストは私がしたことを知っているの?

最期の集団から出た不適格の卵はほとんど全部、リー・ナカルに渡してしまった。
考えてみれば、ものすごくたくさんあった。
何て無駄をしていたんだろう。でもそれももうなくなる。
彼女が言うには私がすでに渡した卵は巣の中に入れられ、彼女の部族の人々が番をしているから安全で、健康にしているそうだ。
私がここを離れてあの子たちに会いに行くのはまだ早いと彼女は考えている。
最後の卵を救い出すまで待ったほうがいい。
多分、そんなに長くはかからないと思う。
考えただけで棘が震えそう。

私の子供たちは元気でやっていると言われた。
まだ卵たちを目にすることはできていない。
村の卵の世話をしていると毎日、あの子たちがいないのを思い出してしまう。
私は自分の子供の世話をしたい。
私はあの子たちの母親なんだから。
他の人たちも、自分の卵を育てる時にこういう気持ちを味わうの?

卵がもうすぐ孵るとリー・ナカルが言っている!
その瞬間を見たいと彼女に伝えたけど、まだその時ではないと言われてしまった。
もうすぐ、絆の儀式が再びやってくる。
私は出席しないだろう。でも、そんなこと気にしない。
部族は私がいなくてもやっていけるけど、あの卵は違う。
あの子たちには私が必要なんだから!

ケンカをして以来、リー・ナカルには会っていない。
戻って来なかったらどうしよう。
そうなったらどうしていいか分からない。
どこで彼女を見つければいいか分からない。
私の子供たちがどこにいるのかもわからない!
私はあの子たちに会いたいだけなのに!

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