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書籍

リーチの酒

ヴォルジャー醸造所のフィヨリダ

リーチの民が近隣の土地に求めるものがあるとすれば、それは味の良い酒よ。ノルドのエール、ブレトンのブランデー、シロディール産ワイン。手に入るものなら何だっていい。リーチの土地の多くは他の土地が大量に産出する、ある種の飲料の生産に必要とされるブドウ園や、大麦畑、あるいは家畜化された蜂の巣に適していないけど、リーチの者はほとんどがお酒を好むの。盗めない場合に限ってだけど、お酒はリーチ人が進んで取引する数少ない日用品の1つよ。

外交的なリーチの民はお酒を取引で入手するけど、外界の商人とあまり接触しないリーチの民は手元にあるもので間に合わせなければならないわ。リーチの奥深くに旅することがあれば、すぐにリーチ産のお酒に出くわすことになるでしょう。そういったお酒は、大抵はリンゴ酒か、「クレフ」と呼ばれる発酵させた汚らしい羊の乳の形を取っている。

リーチのリンゴ酒は濃い色で、かび臭くて、甘い――強引に言えばそこそこ飲める――ものから、済んだ色で、どちらかと言うと慣れが必要な酸味のある造りのものまで幅広い。この風味は、使用するリンゴや圧力をかける年数に依存する。リーチに果樹園はめったに見られないけど、森や川の流域には野生のリンゴの木が豊富にある。そういった地域に住むクランには、それぞれが愛飲するリンゴ酒を醸造するために好んで使う手法があるの。その中には良い酒を産み出すものもあるし、最悪の酒を産み出すものもある。

クレフ。言ってしまえば、クレフとは人が羊しか持たない場合に造り出すものね。こんな代物に耐えられる部外者に会ったことがないわ。それどころか、クレフを好きだと主張するリーチの者は、ただその人がどれだけ不快なものに耐えられるかを証明しているだけなんだと思う。これは勇気を試すものなのね、きっと。でも、ほとんどのリーチの者はクレフが好きだと言う振りすらしないけどね。ただ酔っ払うためだけに飲むの。

うちの優良顧客の一部をリーチの民が占めているのはこれが理由よ。

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