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書籍

亡命者のメモ

噂では… ウルバザールが記憶の石を盗んだそうだ。真相はウルバザールと神のみぞ知る秘密だ。では私達は? 私達には物語がある。私達は実のところ、あちこちから来た寄せ集めなのだ。

最年長のバラムは故郷で商売をしていたが、中傷によってその地を追われた。今では地名を口にすることすら拒んでいる。

ナヤはフォアベアーの医者だったが、彼女が診ていた王家の子供が不治の病で死んだせいで故郷を追われた。

サラマスは二流の詩人で、冗談が抜群に上手い。彼のおかげでみんなの雰囲気がよくなっている。しかし彼は時機を考えずに不適切な冗談を言ったため、エバーモアへ向かう私達の仲間に加わることになった。

仲間の数は多い。自分達がどこから来たか、またはどのような経緯でエバーモアに行き着いたのかを語り合い、私達は時を過ごす。私達はある意味家族になったのだ。

しかしウルバザールは家族ではない。彼は怒れる冷血漢だ。私達がここを生きて出ることはないと彼は信じている。しかし彼の口数がいくら少なくても、噂は広まる。ウルバザールは英雄として迎えられるべき偉大な戦士だったが、追放されたという噂が。その復讐として、「記憶の石」と呼ばれる彼の主人が一番大事にしていたものを盗んだという噂が。

だがそれは噂に過ぎない。日の光や肌に触れる朝のそよ風を長らく感じていない者達が生み出した幻想に過ぎないのだ。

エバーモアで私達は「亡命者」と呼ばれている。私達の境遇に関する問題が解決するまで、ここで待つように言われている。しかし彼らは私達を囚人扱いして、扉を閉ざしてしまった。ここから決して出られないという、ウルバザールの言葉は正しいのかも知れない。

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