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書籍

記憶の書、第2部

ファーヌイヘンからチューターのリパリウスへの指示

稲光のごとく動く男爵! 彼の姿を心に思い浮かべられる? 彼は雲から別の雲へと弧を描くように移動する。予想もつかないコースを取り、目にも留まらぬスピードで行きたいところに移動する! どこでも! 突然に!

いや、違う。自分で自分をだましている。これは言葉でしかなく、幻視を説明する思い出に過ぎない。幻視自体は… 私から失われた。頭では、どこでどうやって戦ったか、いつ誰を倒したのか分かっている。でも現実の出来事の記憶には霧がかかっていて、忘れられた過去の夕暮れの中に静かに消えていく。

例えば、「中から穿つもの」との戦闘で、稲光のごとく動く男爵はセトと私の側で戦った。セトと私が「蝶番のもの」と対決していた時、稲光のごとく動く男爵は「無効なピストン」に過負荷をかけて砕き、燃やした。何かが起きたことは覚えている。ただどんな出来事か思い出せないだけよ。ああ、我が男爵。あの日、皆のために勝ってくれた。

お願いよ。稲光のごとく動く男爵を思い出せるように教えて。自分のその部分の記憶が恋しいし、もう一度見たい。少なくとも、そういう気分よ。

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