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書籍

ヴェランディスの日記

ここまで近づけるとは、夢にも思ったことがなかった。研究がようやく実を結んだのだ。ストーンハスクの器こそが、未知に対する答えだった。これは二つの希望を生む。一つは死後の世界から死者の魂を復活させられるようになる。もう一つはコールドハーバーから吸血鬼の魂を解放し、モラグ・バルから解放できる。この途方もない業を、まずは定命の者に対して試すつもりだ。リソルダという女性が消耗性疾患で死んだ。実験の成功を確認したら、よりリスクが高い吸血鬼の魂に対して試そう。この興奮がぬか喜びに終わらないことを祈る。

* * *
全ての答えを得たと思うとは、なんと愚かだったのか。ラダ・アルサランに定命の者を守るよう説いたのに、その私の実験が定命の者をいたずらに苦しめている。私はリソルダを復活させようとした。当初は歓喜した。確かに死から蘇ったからだ。だが完全ではなかった。生者の世界に戻ったことで、彼女はおかしくなってしまった。激怒していて、炎のように憤怒を感じられた。彼女を助ける術は考え出せなかった。誰にも危害を及ぼさないようにするため、彼女を殺さざるを得なかった。吐き気を覚える。私が傲慢だったため、リソルダにとてつもない苦しみを与えてしまった。恥ずかしい。何がうまくいかなかったのかを突き止めねば。私自身のエキスをいくらか聖骨箱に入れれば、実験が安定するかもしれない。次に試そう。

* * *
未知の要因が多すぎる。儀式を変更したが、完遂は無理だった。魂をコールドハーバーから引きずり出すのに必要な生命力は… 代償が大きすぎた。過程はこの日記に記録するが、実行してはならない。ストーンハスクは信頼性に欠ける手法だ。今のままでは。苦しい決断だが、正しいとわかっている。リソルダの時のように、他の者を傷つける訳にはいかない。危険にさらし、苦しませるわけには。この研究は終わりだ。

* * *
生と死の循環がない世界がどのようなものになるかという考察も始めた。可能性には背筋が凍った。どうして私はこれが平和への道だと思ったのか? 実験と研究をあそこでやめたのは正解だった。

* * *
なぜラダ・アルサランからの招待を受け、グレイホームへ来たのだろうか。好奇心からか。グレイ評議会の軌道を修正し、ストリキが必死に追い求める戦争を回避させることを諦め切れなかったからか? 器具は全て持ってきた。彼らが作った儀式の部屋は、本当に素晴らしいものだった。一時はツィンガリスと改めて研究し直すことも考えたが、それは愚かなことだと悟った。自分のエキスを聖骨箱から引き出せないのは残念だが、それはどうでもよい。とりあえずは、一階の武器庫にしまっておこう。他の聖骨箱に紛れ込ませて。グレイホームに長居する気も、グレイホストのグレイ評議会に残る気もないが、聖骨箱はここならきっと安全だ。自らの過ちに対する戒めとしよう。定命の者と吸血鬼の間の平和を仲介するつもりなら、この先の道はとても長い。ここを去る時が来た。

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