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書籍

アヌラーメ姫の話

アヌラーメ姫がバルコニーに出ると、冷たい風が彼女の足元、スカートに当たった。彼女は視線を上げて、塔を見つめた。何も見えないこと… 召使の少女の言葉が嘘だったことを願いながら。最初は暗闇の他には何も見えず、何も動いている気配はなかった。彼女は安心して息をつき、風を防ごうと腕を組んだまま、立ち去ろうとしていた。

だがその時、雲が割れ、満月の灯りが塔を照らした。月に照らされて輪郭が浮かび上がった。彼女の愛する人と彼女の姉妹が、情熱的に抱き合っている姿がはっきりと見えた。

彼女は動けず、呼吸さえできなかった。彼女の心が曇り、一粒の涙が彼女の頬に落ちた。

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