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書籍

ダリアン・ゴーティエの日記

新しい日記の使い初めだ! 書き出しはどうしたらいい? 堅苦しく、形式ばった文体を使うべきか? それとも、もっと砕けた感じがいいのか? ああ、決めなきゃならんことが多すぎる! どうしたら続けられる? それに、書きっぱなしでいいものか。後で読み返し、本音を反映されるべきじゃないのか? くそっ! なんだってアリノンの口車に乗せられて日記なんぞをつけることにしたんだ?

アリノンからは、日記をつけることで、夜毎の悪夢から解放されるかもしれないと言われた。あの嘘つきめ。どうせ、あれこれ秘密を書かせては隊の仲間に吹聴し、陰で笑いものにしようって魂胆だろう。

実際、悪くないアイデアだ。あいつにしては上出来さ! まあとにかく、日記をつけるときは、そのことを心に留めておかないとな。

* * *

チーズ
パン
新鮮なハーブ
牛肉(できるだけ上質なもの)

そう、これは買いものリストだ。考えたことでも感じたことでもない。ただ、どこかに書き出す必要があって、たまたま日記が手近にあった。治癒の効果を期待してつけている日記だが、実用的なことに役立てても別にかまわんだろう。

* * *

備忘録: 夕方、酒場でプレサイラと飲む予定。忘れないこと。

* * *

備忘録: 明け方、酒場でシェリと飲む予定。忘れないこと! 約束を忘れて以来、プレサイラとはぎくしゃくしている。

* * *

よし。そろそろこの日記を本来の目的に使う潮時だ(自分への伝言: 備忘録は読み返さないと意味がない)。

この日記を盗み出して中身を衛兵隊の連中にばらすつもりなんかない。アリノンはそう請け合った。これまでに見た悪夢に関して憶えていることを何でもいいから書きとめてほしいだけだという。からかわれているという疑念はまだ拭えないが、とにかく、何でもやるだけやってみようと思う。それだけ、このところの寝不足はひどい!

細部まで鮮明に憶えていることは何もない。冬以来、悪夢は何度も見たが、記憶に残っているのはぼんやりとしたイメージばかりだ。1つの長い夢の断片なのか、別々な夢の一部なのかも分からない。ただ、すべてに共通するのは、目が醒める直前、明るい光が現れる点だ。それが話しかけてくるとか、それの言うことが聞こえるとか、そんなふうに言えたらいいんだが、あいにく目が醒めたときに憶えているのは、目を覆わなければならないほど眩しく光り輝くオーブだけだ。

他にも夢に繰り返し出てくるものがある。陰鬱なイメージと恐ろしい出来事だ。俺は見た。空が暗くなり、裂けたかと思うと、そこから巨大な枷が降ってきて地面に打ち込まれるのを。俺は見た。デイドラとアンデッドの軍勢が我々の街という街に攻め寄せ、邪魔立てする者を誰彼かまわず殺してゆくのを。

また、別の夢では、死の顔を見た。そいつは牙から血を滴らせながら、俺をじっと見つめた。俺はその牙が自分の喉笛に食い込むのを感じ、俺の血をすすりながらその化け物の体が炎と化すさまを見た。そして、俺の目の前には寒々とした青い大地が広がっていた。ごつごつとした岩が、異様な空に浮かんでいる。目が醒めているときには、見たこともないような空だ。遠くからいくつもの悲鳴が聞こえてきた。何もかもが冷たく、命を失い、無と化していた。

やがて、例の光がもう一度、まるで俺を安全な場所に導くかのように現れる。何かを俺に告げるために、何かを言いかけて… そこで決まって目が醒める。

どれほど疲れていようが、どれほど酒を煽ろうが、悪夢は必ず訪れた。ああ、一晩でいいからぐっすり眠りたい!

* * *

タマネギ
トマト
パン

くそっ! またやってしまった! そういえば、このところ悪夢を見ていない。なんだかんだで、この日記が効いているのかもしれんな。

* * *

信じられない。夢が現実になった。俺は戦慄すべきだろうか、それとも… とにかく、何を考えたらいいのか分からない。分かるのは、これが夢じゃないってことだけだ。

タムリエル中に、空からアンカーが降ってきている。我々は侵略を受けているのだ! 好意的な神なら誰でもいい、我々を見守りたまえ。俺の悪夢が現実のものになろうとしている。

アリノンにこのことを知られるわけにはいかない。そんなことをしたら、俺のことを預言者だのなんだのと思い込み、大げさに騒ぎ立てるだろう。そんなのは絶対に願い下げだ!

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