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書籍

アリクルのアサシン

著者不明

シャドウスケールは命じられた場所に行き、必要なことをする。自ら裁きを下せない者たちに成り代わって裁きを下すのだ。モットーは速やかな死。なぜなら、いたずらに苦しみを与えることは、概して眉をひそめられるからだ。

私は新しい任務を希望した。この前アリクルで片づけたようなのとは違うやつだ。あの地方のさびれた海岸の塩の味が、いまだに舌に残っている。風に吹かれた砂が目に入る痛みを、いまだに感じることができる。

そしてあの悲鳴が、いまだに耳から離れない。

ところで、生まれながらのアサシンは、どうやってそれと知るのだろう? 私の場合は予言だった。そして、それを知ったことで力がみなぎってくるのを感じた。これから学び経験することのすべてが、私の宿命を成就させるだろう、と。

一線を踏み越えた者は罰せられなければならない。この世には守るべき法というものがある。裏切りは許されない。金も稼がなければならない。

しかし、アリクルでの仕事は勝手が違った。私は数日かけて罪人たちを監視し、彼らが砂漠と呼ぶ、追跡不可能とされる荒地で彼らの後を追った。やがて、チャンスは海に臨む砂丘の頂で訪れた。

「ここまで来れば大丈夫よ」そう言う女の声は希望にあふれていた。

「大丈夫なんてことはもうないだろう」男は苦々しげに答えた。

刃物の鞘を払い、前に進み出ようとしたその刹那、頭上で風向きが変わる音が聞こえ、私は暗がりに戻った。

ハーピーの群れだ! 悪臭を発する翼を大きく広げて旋回する怪鳥の群れに、2人の男女はまだ気づいていない。願いを叶えられる見込みなど端からない奴隷商人とその恋人の頭上で、ハーピーたちは明るい星空にシルエットを浮かび上がらせていた。

ハーピーの群れが鉤爪を剥いて襲いかかってくると、男女は悲鳴をあげた。ダンマーの柔らかな肉を、剃刀のように鋭い鉤爪が切り裂いてゆく。ハーピーは犠牲者をもてあそび、彼らの悲鳴をハーピーの言語らしき不明瞭な発声で真似た。

ダンマーたちが息絶えるのを確認してから、私はその場をあとにした。本来彼らが迎えるべき最期とは違ったが、それがどうしたというのだ? 死は誰にでも訪れる。望まれもせず、待ちわびられるわけでもないそれは、時として頭上から訪れる。

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