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書籍

バール・ダウに関する証言

准編年史家、ミネルヴァ・カロ著

バール・ダウはヴィベク・シティの上に不気味に覆いかぶさっている。文字通り、そして比喩的にもだ。公式な説明は著しく曖昧である。マッドプリンスのシェオゴラスがニルンに向けて巨大な岩を投げつけたという。その理由も方法も誰一人として知らないようだ。ダークエルフの基準で考えても興味深い話だ。一般庶民はバール・ダウについてどう思っているのか聞いてみた。これが彼らの話である。話し手を聖堂による報復から守るため、名前は変えてある。

悩みを抱えたダークエルフの商人、トルヴァサと話すところから始めた。クワマーの卵の仕分け作業を止めて、次のような話をしてくれた。

「子供の頃、寝る時間になると、母はいつもバール・ダウにまつわるいろんな話をしてくれた。どれも本当じゃないと思う。お気に入りは」孤独なマグナ・ゲの話「だった。」始まり「で始まる話さ。その話の中で、ウナという名の星の孤児が兄弟や姉妹と一緒に空へ逃げたんだけど、暗闇で迷子になってしまった。助けを求めて泣き叫んだけど、彼女より強くて足の速い子たちは、一人ずつエセリウスへと逃げ込んでいった。そのうち、彼女たちの歌は聞こえなくなり、ウナはひとりぼっちで空間を漂っていた。彼女がすっかり望みを失ったちょうどその時、誰かが泣きじゃくる声がかすかに聞こえた。ひとりぼっちのニルンが、暗闇の中をよろついて、赤ん坊のようにしくしくと泣きながら眠りにつこうとしていたのだ。似た者同士を見つけたウナは、その孤独な惑星を慰めるためムンダスに戻った。そして自身をバール・ダウと名付け、ここヴァーデンフェルの上に寄り添った。今ではその星の孤児とニルンは互いがいるので、決して孤独ではない。いい話でしょう?」

ノルドの鉱山労働者ホッドスタグは、もっと実利的な考え方をしていた。

「金山に違いないんだ! あそこには絶対に何らかの希少な金属がある。地質学者のダチがいて、ゴールドコーストの採掘作業に関わる仕事をしてるんだ。奴は豊かな鉱床が見つかる兆しがあると言ってる。占い棒を持ってるからな。ドワーフのからくりだと思う。このことは話さないことになってるんだ。とにかく、奴がそれをバール・ダウに向けたら、そいつが春の雪ミソサザイみたいな音を立てたんだ! あとはつるはしを持ってあそこへ行って、サンプルを取ってくるだけだ。あそこへ飛ばしてくれる奴を探してるんだが、見つかってない。なあ、お前は人間を飛ばす方法を知らないか?」

もちろん、バール・ダウについて誰もが進んで話したがったわけではない。ドノヴェンという白髪交じりの港湾労働者は次のように話した。

「岩だ。どうやってあそこに飛んだのか分からない。魔法かな? さあ、仕事があるからもういいだろう? あっちへ行け」

ほとんどの話はかなり退屈だった。ある程度の時間と露出があった後では、異様なことでさえつまらなくなるのだ。もちろん、本当に驚くべき話もいくつかあった。ダークエルフの学者で興奮しやすいティラムの話もそうだ。

「あれは、見てのとおり卵だ。道楽者や田舎者があれをよく」岩「と読んでるのを耳にする。ふんっ。無知のたわ言だ。あれほど壮大な天体を見て」岩「と呼ぶなんて、よっぽどの愚か者だろう。バール・ダウはさなぎで、あそこからヴィベクとモラグ・バルの不幸な結合による最後の子供が出てくるのだ。その日が来たら、輝かしいベク卿が聖堂から飛び出て、その悪夢の子と戦うことになる。そして47日にわたる激戦の後、ヴィベクは最後の一撃を与え、その獣の残骸を泡立つ海の中へと投げ捨て、そこで36個の断片となり、その後どれも見つかることはない。まったく壮観な光景だろうな。同時に恐ろしくもある」

おそらく最も面白い説明は、ナルクホズグという酔っ払ったオークによるものだった。

「え、あのでかい岩? ああ、あれは巨大なクソの塊だ。本当だって! 聞いた話だと、ヴィベクとマラキャスが夜更けまで飲んだり神っぽい話をしたりしてたんだ。分かるだろう。あ、分からないか。とにかく、ヴィベクがオーガについて、モーロッチの気に触るようなことを言ったもんだから、奴は街の上でしゃがみ込んで、臭いのをヴィベクの頭の上に落としたんだ! 汚いだろ? ふふん。それがマラキャスだ。でも考えさせられるな、どうしてマラキャスの話にはいつもクソが関わってるんだ?」

教義審問官に公式な声明を求めたところ、次のような答えしか戻ってこなかった。

「そのような事柄はトリビュナルに任せておくのが賢明であろう。バール・ダウの詳細は謎である。あれに滅ぼされないでいるのはヴィベクの神聖なる慈悲によるもので、それだけを知っておけばよい」

聖堂の努力もむなしく、月のバール・ダウは、その到来から何世紀も経った今も尚、活発な議論の対象であり続けている。意見の多様さは注目に値する。宗教の信者によって徹底的に取り締まられている街であることを考慮すればなおさらだ。このように制限された社会においてさえ、表面下では民話や野心的な説があふれているというのは、とても興味深い。

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