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書籍

ラジーンと石の乙女 パート1

何年も前にラジーンが川を通りかかった時、遠く離れた対岸からすすり泣く声が聞こえた。向こう岸では女性がポケットに石を詰め込んでいた。石を入れ終わると女は川に入っていった。

彼女を溺れ死にさせられなかったから、ラジーンは川面を泳いで渡り、墓場になるであろう川から彼女を引き揚げた。

「神様、なぜ助けたのですか?」と彼女は聞いた。「トリックスターの神であるお方が、私の意図を分からないとでも?」

「お嬢さん、意図は分かるが理由が分からない」

女はしかめつらをして背を向けた。「私の苦境が理解できるはずもない。お願いだから石を集めて歩みを続ける私の邪魔をしないでください」

ラジーンはしかし、理由を聞くまで彼女が石を集め続けることを許さなかった。

その女、ムニリにはマザラムという婚約者がいて、二人は心から愛し合っていた。だがムニリの義父、アゼリト・ラは欲深い男だった。結婚の許しを与える前に、彼はマザラムの莫大な財産以上の、そして理不尽なほどの持参金を強く要求した。

アゼリト・ラは二人が住む村の長で、彼の不正に声を上げようとする者は皆無だった。しかしマザラムはアゼリト・ラに屈せず、義父の憎しみは増す一方だった。それでもマザラムは駆け落ちでムニリに不名誉を与えることはなかった。婚約者が義父の要求によって破滅するのを見るのではなく、ムニリは川を選んだ。

「義父が村を支配しているのか?」

「鉄の爪を用いてです、神様」ムニリは悲しげに答える。「賄賂を贈らない者は借金があるのです。マザラムのような少数だけが支配を逃れていて… 義父はあらゆる手を尽くして、彼らを破滅させようとする」

「ちっぽけな村を支配して義父は満足だと思うか?」ラジーンは聞いた。

「満足?」涙を拭きながらムニリはあざ笑った。「彼はその言葉の意味を知らないわ」

「それなら力になれるかも知れない。さあ、マザラムを探そう」

村へ行きラジーンは若い娘に計画を説明した。

午後になりマザラムとムニリはアゼリト・ラのムーンシュガー大農園邸の玄関で彼に話をもちかけた。正式に婚約していたにもかかわらず、手をつなぐ二人を見てアゼリト・ラは腹を立てた。「それで、小さな貧しい人」義父はマザラムを迎えて言う。「持参金を了承したのかな、それともやっとお別れかな?」

マザラムは怒らずにさっと頭を下げた。「村長、持参金を用意できないのは確かですが、もっとよいものをお渡しできます」

アゼリト・ラの耳がぴくりと動いたが、懐疑心からせせら笑った。「もっとよい? 一人娘のために要求する金額よりよいのか? いいだろう。取引の内容を話せ。十分であればそれでよい。だが違った場合、お前の尻尾には永久に去って貰う!」

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