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書籍

よそ者の観察記録 - 記録 3

取り残された魔術師、ロザリンド・フレンリック著

で、私の記録は… カラフル? すぎるって言われてる。たぶん書き方がってことよね。きっと茶色の世界で育った後だと、ちょっとした色で混乱しちゃうのね。それでも観察記録を書けと言ってきた。自分が知ってるやり方以外でできたら驚きよね。という訳で、彼らにはもうちょっと頑張って「分析」してもらうわ。

現時点で訪れたことのある、クロックワーク・シティの別の場所について書こうと考えた。真鍮要塞とラディアス一般については話したけど、この周辺には他にも私が連れて行かれた場所がある。そのうちの何ヶ所かは、他に比べてもう少しだけ日常的な感じに思えた。まあ、私の日常的の定義を「謎の父」の定義と比べていいのかは分からないけど。

最初に連れて行かれたのは「記憶のプラニスフィア」。まあ、側を歩いたって方が近いわね。というのも、中に入ることは許されなかったから。ソーサ・シルの記憶の貯蔵庫みたいなものだと言われた。そう、そうなの。記憶だって! 見たところ、彼には巨大な建物にまとめておきたい記憶がすごくたくさんあるみたいよ。ほぼお城くらいの大きさはあったわね。それに星みたいな? 感じだった。どうやって記憶を星にするの。謎だけど、まあ、私は神じゃないから。

次ははるかに日常的な場所で、ホール・オブ・レギュレーションと呼ばれる所。ところで、私は真水がいったいどこから来るのか疑問に思っていたの。何故ならここの川とか湖は、よりによって油で満ちているから! どうやらこの場所が、どうにかしてそれを全部きれいにしてるみたい。もちろん、彼らは説明しようとした。水の循環とか蒸発とか、なんかそんないい感じの用語について話していた。でもね、それが真水をもたらしてくれるんだから、ほぼ意味が分からないからって文句は言えない。

中は期待したほど小奇麗でもなかった。大量のパイプ、大量の蒸気、大量のファクトタム。周囲のそういうもの全部に不安を感じずにはいられなかった。彼らがホール・オブ・レギュレーションを保っているんだって聞かされた。全て彼らだけで。衝撃だったわ。だって全ての操作はちょっと手がかかりそうだったから。あそこには命令をして、全てが上手く運ぶようにする使徒がいなかったの? それから彼らがソーサ・シルと、全てを「完璧なレギュレーション」に設置したやり方について語り始めて、正直私はその辺りから話が分からなくなった。

それから私たちは北の〈巻かれ続ける源泉〉へ向かった。ここはお気に入りだったわ。だって本物の食べ物があったんだもの! 人生でリンゴを食べるのがあんなに幸せだったことってないわね。何週間も味のないお粥を食べてた後だったから、今までで味わったものの中で一番美味しく感じたわ。ママは正しかった。空腹は本当に最高のスパイスだわ。それに、全ての植物が緑だった! 自分がこんなに緑を恋しく思うなんて考えもしなかった。

ワクワクしていたにもかかわらず、この場所は何かがおかしいと感じずにはいられなかった。運営をしてたエルフはすごく感じが良かったけど、話した後に彼は頭のネジが緩んでたってことに気づいた。全てのストレスが彼のところに行っちゃってたに違いない。きっとたくさんのプレッシャーに晒されていたのよ。特にソーサ・シルが飽きた後のプロジェクトを引き継いでからはね。

さて、彼らはこの観察記録報告書を、今できる範囲で最高のものに仕上げてって言ってる。私は彼らがこれ以上私の観察記録を求めてると思わない。だから、これで終わりかな。そうね、つまり全体的な印象として、クロックワーク・シティは… まあ、私が今までに足を踏み入れた中で最も危険な場所。自分を神と呼び、信者をここに住まわせてる誰かを私は本当に信じられない。ここは生きている者のためではなく、機械のための場所だわ。

それでも、奇妙な美しさはある。木の金属の葉が太陽の光で輝いているのは特に素敵。たぶん、慣れなきゃいけないんだと思う。だってこれは片道の旅のようだから。ソーサ・シルだけがクロックワーク・シティを離れられる。正直言うと、私がここから出られなくなる最後の間抜けになればいいと思う。他の誰にも、こんな人生を送って欲しくない。

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