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書籍

窃盗の美学

良心的窃盗の専門書

ジザー・ダー著

物を盗むこと自体は単純だ。単に盗もうとする物を頂戴するだけなのだから。適切な状況下では油断なく守られている宝でさえも簡単に盗めるが、そのような事例はここでは議論しないことにする。

本書の読者には有能な泥棒になることを期待する。方法論、攪乱、そして交易の道具について本書は議論しないから、もしあなたが腹を空かせたジャ・カジートでセンシャルの街路を進むつもりなら、他書をあたってほしい(本当に! 何を読んでるんだ? 外へ出て獲物の下調べをすべし!)。

盗賊、強盗犯、横領犯、そして詐欺師は… 読み続けるように。一つか二つは学べるかも知れない。

あなたの才能に相応しいのは誰か?

有能な泥棒であれば、次の強奪を行う時の問題は時間と場所にすぎないと分かっている。しかし手袋と同じくらい軽い心を保つためには、標的に十分警戒すること!

やりやすい標的は数多にいるが、ほとんどはあなたと同じくらい絶望している。放っておけ! 溝を掘る労働者や皿洗いが一生懸命働いて得た夕飯をだまし取っても、名を成せないし、彼らはセンシャルのくずどもが暗記している歌を絶対に歌わないだろう。

代わりに、紋様の刻まれた剣と装飾の施された鎧を装備した長身の歩き手3人の後方、そこに埋められた財布をもつ商人を狙うんだ! 錬金術の悪臭をキャンバスの街へ吹き込む塔の魔術師には気をつけろ。.地べたを這う蛇のいないところで、華やかさを財布に入れたダンディな爪を探し求めるんだ。

全部盗んではだめだ。一部だけだ! 盗まれたものは「許容できる損失」と彼らはみなすだろうから。盗まれたと告白すれば、街中の者が窓から侵入するきっかけになる。彼らが衛兵に通報するのは稀だ。

また、彼らの所持品はそのほとんどが盗めるという事実も知っておいて損はない。しかし、盗むに値するものは何だろうか、そして最も重要なことは、暗い監獄からあなたが解放した貴重品のすべてには何の価値があるのだろうか?

膨らんだ財布をどうするか?

ポケットの中にあっても、地中にあっても、財産というものは心と精神に重くのしかかる。

名高い財宝を盗むのは魅力がある。ラジーンの幾多の伝説を聞いたことがない者はいるだろうか? だが、伝説が語るように一部の財宝は持ち去ることが困難で、しばしば対価よりも問題の方が高くつく。

ゴールドはもちろん最良だ。小さくて持ち運びしやすい。次に良いのが宝石だが、精緻に装飾されている場合は溶かす必要があるかも知れない。

食料も同様に価値が高い。即座には交易価値が生まれないかも知れないが。特に回復の効果をもつものを探すのだ。適切に用いれば価値は測り知れない。

雑貨も見逃すな! 財宝は大抵強固に守られているか、罠が仕掛けてあるから盗む努力に見合わないが、すべての獲物が盗める見込みがないわけじゃない。極度の被害妄想者だけがシュガークローゼットを警戒する。一体誰が甘党の邪魔をするというのか? 戸棚についても同様だ。なぜならすきっ腹は素早く満たされる必要があって、障害となるのは仕掛け線だけなのだから。

高慢ちきになって雑貨を盗まなくなるのはだめだ。ほぼ確実に盗める一方で、腹を満たしてくれるし、至福のムーンライターを盗んだとしても、同業者の評価は高まる!

どこへ逃げるべきか?

持てるだけ持っていけ! ベルトが背中に食い込むほどポケットと小包に入る物を詰め込め! 気前のよさは財布の膨らみに直結するのと同じく、逃走にとっても重要だ。

いつものように追手が来たら、下腹部にしっかりと巻かれた戦利品が壁から降り注ぐ矢を避けてくれる。

通りでは結びの紐を切り離し、追手の道に財宝を巻け。人々に財宝を投げつけろ! 彼らがお宝に飛びつけば混乱が広がって、逃走に利する障害となってくれる。

この試みは追手を遅らせるだけではなく、気前の良さが噂となって山火事のように通りで広まるだろう。名声よりも価値のあるものがあるか? 名声は必要な時に安全な隠れ家を、不景気な時には腹に入れる食料を、そしてもっと大切なことは、名声があれば人生最悪の問題を切り抜けられる。

また老いぼれになって屋根を飛び越えられなくなったとき、あなたの伝説はグリースのよく塗られたタンブルキャッチと同じくらい綺麗だと納得して、孫のところで気軽に休憩できる。

あなたの偉業に幸運を! 偉業が歌となって世界の酒場やスラムで語られる時、ジザー・ダーは間違いなくその歌い手となるだろう。

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