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書籍

モラートの稲妻理論

コリンスの魔術師 小モラート著

素人や見習いの魔術師の誰もが経験すること、それは雷撃呪文を間違えることだ。魔法が自分に跳ね返ると叫び声が上がり、全身の毛が逆立ち、ショックが体を走り尻尾の先から抜けていく。そしてその者は初めて真剣に考える。稲妻、それは一体何なのだろう?

モラートの話を聞いて欲しい。この者が説明する立場にあるからだ。必死に勉強し、何度も入学試験を受けて、モラートはコリンスの魔術師ギルドホールに正式に認められた修行者になり、魔法の問題について権威を持って話せる立場についた。私はここのところ稲妻に関する事柄を研究している。アルケインの学者が行うように、それを専門として。そして、その問題については独自に、少なからぬ考えを巡らせてきた。

その結果、この者は1つの仮説に達した。

雷撃、それは炎や氷結と同様、自然の力の姿をした魔法の力の現われだ。ジャ・カジートなら誰でもこの力で遊んだことがある。じゅうたんの上で足をこすって、伸ばした爪から出る小さな火花で兄弟をピリピリさせる。またはふくらませたネズミの革の浮袋を自分の毛が立ち上がるまでこすりつけ、それを自分の胸や腕に「貼り付け」る。

だからこの者にとっては、雷撃が繊維状の物体特有の性質であり、それが摩擦により刺激されて火花になることは、子供のころから明らかなことだった。これは稲妻についても同様だ。雲は巨大なテンマールの脱脂綿と同じで、嵐が空に浮かぶ繊維の塊とぶつかることで摩擦が生じて、雷撃を生成する。

では、魔術師ギルドの私たち力のある魔術師が雷撃呪文を唱える時、実際に何が起こるのか? この者の説明はこうだ。ムンダスの世界は物質とマジカという糸から編まれた巨大なタペストリーだ。雷撃呪文はそのタペストリーの縦糸と横糸を通して、繊維を激しく揺り動かしながらマジカを運んで操る。これにより火花が生成され、それが一体化して魔法の稲妻となる。分かるだろう?

こういった直感は熟練した魔術師であればたやすく得られる。この仮説を賢者に伝えたところ、この者は賞賛と激励を手にした。実際、今やモラートは本物の魔法学者になった。この者は、明日にはまた別の仮説を思い付くかもしれない!

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