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書籍

猫人間における月の崇拝

シランティレ著

カジートの住居に足を踏み入れると、それが北方の崩れかかった野営地であれ、南方の簡素な街であれ、そこには双子月の聖堂が見られる。そして、いつでもそれが一番大きい建物である。長持ちするように作られ、その地方で最も良質な素材が用いられているこの崇拝の場は、カジート社会の中心である。猫人間たちは神々を優れたものとみなしてはいるが(彼らの聖域は我々の八大神を低俗化したものに祈りを捧げている)、彼らは月のラティス、あるいはマッサーとセクンダの運動があらゆる幸運と運命、そして偶然を左右すると信じている。ヴェヌスティニウス・パーキティヌスが「混合的異端」と名づけた信仰である。

カジートの教義で、月は神聖なものであり、ムーンシュガーの吸収によって猫人間の身体に命を吹き込んだとして崇められている。ムーンシュガーとは聖なる原料であり、精製すれば幻覚性の密輸品にもなる。これは料理にも儀式的用途にも使われるが、これを蒸留してスクゥーマという、悪質かつ違法な催眠薬を作ることも容易である。このような野放しの錯乱は、こうしたものの接種を取り締まる月の司祭という階級によって監視されているようであるが、この階級はカジートの儀式においても一定の役割を担っている。この聖職は主に公共事業の運営や堕落した信者の取り締まり、そして神学上の問題の決定に関わっている。膠着状態に陥った場合、問題はたてがみその人によって解決を見る。

月のラティスの絶対的支配者であるたてがみは、クランの族長とエルスウェアの王を除けばカジートの中で最も有力な存在である。我々の南部国境にいずれ敵対行動が起こった場合、彼らは賄賂か腐敗、排除の対象となる重要人物になると思われる。それ以上に興味深いのはたてがみの継承の儀式である。現在の者が力尽きると、聖なる儀式がその後継者を決める。月の使者が任命を受けて志望者たちを導き、カジートの文書に記された、双子月の表面への雄大にして危険な冒険へと向かわせる。そして生きて帰ってきた、ただ1人の候補者が新たなたてがみに選ばれる。

寝転がる猫が宇宙を旅して我々の月に到達するなどとは、馬鹿げた思い込みである。ヴェヌスティニウス・パーキティヌスはこれを「吐き気のするたわごと」と名づけており、至当である。

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