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書籍

アグノールへの手紙

アグノール・グロー・ムラクへ

これを読み終える頃には、お前の知っている誰かが死んでいるだろう。

家を見つけたようだな。港の倉庫だと? 本当か? そのような場所に隠れているということは、かなり面倒なことに巻き込まれるということだ。だがお前は厄介事から逃れることはできない。

お前はたぶん鎧がなくなったことを心配しているんじゃないか。武器もだ。それに服もだ。お前の汚い寝床もそうだ。

お前に少しでも良心があるなら、故郷にいる妻達のことを心配しているはずだ。なぜ逃げたんだ、族長?

それはともかくとして、お前の第一夫人は最高だな。彼女のことを覚えているだろう? あの冷酷な錬金術師はお前のことを大笑いしているぞ。ある日、彼女と一緒に部族に対するお前の指導方針について話し合ったのだ。それでだな、族長。彼女はお前のことを話すときに、本当に残酷な笑い声を上げるんだ。

ゴブリンだらけの洞窟を襲撃したときのことを覚えているか? 忘れてないよな? 奴らはただの哀れなゴブリンの集団だった、でもお前は待ち伏せに失敗し、私達の優秀な戦士が数人犠牲になった。私は彼らの葬儀の時の、嘆き悲しむ声を覚えている。だがお前が彼らのために嘆き悲しんでいた記憶はない。

それでは、レッドガード相手に商売をするためにダガーフォールに剣を運んだときのことは覚えているか? 高価な積荷だったが、誰かがキャラバンに十分な衛兵をつけなかった。それが誰だか覚えているか? 私は一族で一番隠密行動が得意だった。私なら積荷を守れただろう。だがお前は私を使わなかった。

だがお前はいいこともした。それは認めよう。お前は私達にマラキャスの掟を教えてくれた。一族は臆病な族長が死ぬまで、新しい族長を据えることはできないというのもそのひとつだ。妻を持てるのは族長だけであり、他の者は妻を持てないというのもそうだ。

もうウンザリだ。

ところで、アツゴルがよろしく伝えておいてくれと言っていたぞ。彼女のことを覚えているか? 錬金術に精通していて、残酷な笑い声を上げる彼女のことだ。

時々お前の頭は回転が鈍くなる。だがお前ならいずれ答えを見つけられるだろう。私の兄弟はあのゴブリンの洞窟で一度もチャンスを与えられなかった。つまりお前にその機会を与える必要はないと思っている。だからお前は逃げたんだろう、族長。

だが心配は無用だ。アツゴルはお前に毒を盛るつもりはないようだ。彼女はキャンプの近くでお前を殺したりはしない。彼女はそんなことをするような性格じゃない。

なぜならお前が死ぬ時は毒じゃないからだ。お前はきれいに、剣の一太刀を浴びて死ぬことになる。

今、私がお前の後ろに立っているのはそのためだ、アグノール。

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