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書籍

カスタブの日記

<折りたたまれボロボロになったページには、土と血にまみれた短い文章が様々な形で書かれている>

私の名はカスタブ。それを忘れてはならない。カスタブ。苗字は思い出せない。以前は服を仕立てていた。上質なものを。レヤウィンのささやかな店で売っていた。よく息子が手伝ってくれた。

なぜここに来たのか、記憶がぼやけている。おぼろげだ。ここではそうなる。血が滴るたびに詳細が失われる。息子がいるのはわかってるのに、顔が思い浮かばない。

ここには他の人もいて、土まみれで鎖に繋がれている。彼らはあれをドレムナケンと呼ぶ。それが名前なのか種別なのかは思い出せない。その声は私の頭に入り込む。雷鳴のように眼の後ろで響いている。飢えと残酷さを表す、絶え間ない咆哮。

衛兵が連れて行く人の中には、二度と戻らぬ人もいる。彼らは泣き叫ぶオークの男を引きずって行った。あれほど怖がるオークは見たことがない。

と言っても、私が恐れているのは死ぬ方法だ。神々が終わらせてくれることを祈っている。

衛兵たちがドレムナケンの話をしていた。街のこの地域を支配しているらしい。彼らはドレムナケンを称賛している。良い刺激を与えているのだ。ドレムナケンは狩りのたびに存在を危険に晒すのだと言う。彼らはそれを尊敬すべきことだと考えている。どういう意味なのか、私には理解できなかった。

その言葉を聞いて怒りに駆られた。食ってかかろうとしたら、エルフの女性になだめられた。そんなことをして何になる? もう彼女の名も思い出せない。

囲いの中には、ほんの数人しか残っていない。ドレムナケンは狩りを完了できない。力を失いつつあるようだ。より遅くなっている。占いにはもっと人数が必要だ。私は2回、いや、恐らくもう3回は行った。行くたびにより多くの生命を奪われる。息子がいたことを知っているのは、以前書き留めたからに過ぎない。それでも自分の名は思い出せる。カスタブ。

エルフの女性が姿を消す前に秘密を教えてくれた。脱出口がある。以前からの囚人、名前が思い出せない誰かが穴を見つけた。壁のごく一部が欠けている。自由になれる人がいるとしたら、穴を這って抜けられる人だろう。彼女は穴のことを知ったいきさつを思い出せなかった。だがその話は必死に保っていた。

残っているのは私だけだ。さらなる血を求めて怪物が叫ぶ。私はカスタブ。私はカスタブ。私は

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