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書籍

トラシウス・メントの日記

収穫の月3日

とうとうセンシャルに到着した。疫病の発生により大混乱が生じていた。自分の弱さを実感した。今日、犠牲者の姿を見て、嫌悪を感じてしまったのだ。引き返したかった。だがマーラが私をつなぎ留めた! 皮膚のただれ、血の混じった咳、痛みに苦しむかすれた叫び声! もう少しで逃げ出すところだった。しかし私のように知恵ある者が逃げ出してしまったら、どうやってこの疫病を治療できるというのだろう。そしてどうやって疫病を防ぐというのだろうか? ナハテン風邪を勝利させるわけにはいかない。私がこの疫病を終わらせる手がかりを見つけてやる!

収穫の月8日

街には他にも私のような者たちがいる。故郷を離れ、治療方法を見つけるために自分の命を危険にさらす者たちだ。仲間がいてうれしい。私たちはお互い協力し合って、この病気で死んでいく者たちを楽にする方法を見つけた。患者たちを(そして私たち自身も)頭からつま先まで包むことで、皮膚のただれの露出を減らした。鶏ガラのスープが咳を和らげるという噂は本当だったようだ。だが私が持って来た治療薬では1人の魂も救えなかった。一度症状が出てしまえば、もう進行を止めることはできない。

収穫の月12日

すべてを試した。薬、軟膏、香料。祈りまでも。だが誰一人回復していない。とても疲れた。焦りと悲しみで食べることもできない。胃がムカムカする。目はかすんでいる。息をするのも苦しい。休息が必要だ。分かっている。だがまだ希望は失っていない。

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