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書籍

バーン・ダルの最初の巻物 (抜粋)

ダガーフォール、第二紀225年、恵まれし者アルカンの見習い、ジャーヴス翻訳

エルスウェア東部にあるヴリード湖近くで、アラバスターの壷に入っていた上質羊皮紙、バーン・ダルの巻物を完全翻訳しようと、学者達は何年も苦労してきた。私自身はこの翻訳の信頼性について何も断言できない。読者は注意のこと!
— 「ほら吹き」の忠実な信徒、ヤナバー・ジャ
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伝説のバーン・ダル。盗賊、妖術師、闇の主人、自慢屋。極悪計画の黒幕。これらを含む様々な表現が使われる伝説的なバーン・ダルは、山賊の神と呼ばれた。亡命者。のけ者。しかし真実は?

バーン・ダルはもっと単純であり複雑な存在だ。私はこの話を高齢と屈辱的な矢による負傷のためにゆっくりと死にながら記す。真実がバーン・ダルという伝説に何かを足すことになるのか、何かを奪うことになるのかは分からないし、バーン・ダル自身が真実を知られたがったかも分からない。そのため、私が消え去る時にはこの話を隠しておき、運命(それはバーン・ダルにとって真の師であり動機であった)に決めてもらうことにする。

初めてバーン・ダルに会った時、私は12季の子供だった。数多く起きた地区内の境界争いの最中に、奴隷職人の襲撃によって孤児になった。機転と手先の器用さ、そして幸運を生かして、生まれ故郷の裏通りと脇道で生活していた。街外れの崩れた外壁近くの市場で、地元の露天商人からちょうどパン1個と小さなリンゴを少数「拝借」したところだった。ごちそうを楽しむために暗い路地に引き揚げた時、自分と同類の年上の集団に取り囲まれた。年上かつ怠け者な類いで、盗っ人から盗むという楽で危険の少ない手法を常としていた連中だった。

いじめっ子は5人で、自分達の方がごちそうを手に入れる権利があると考えて、終始笑いながら杖で痛めつけ、私は半分死にそうになっていた。地面に横になり、頭と股間を守ろうとして力の限りきつく丸まりなっていると、静かな声がその連中に「埠頭に行って同類のネズミから食べ物を取る方が似合ってるんじゃないのか、でなければ、その遊びは同じ大きさと数の相手に試したらどうだ?」と言うのが聞こえた。

私の「連れ」が新参者に気を取られ、とりあえず殴ったり蹴ったり平手打ちしてこなくなったので、見上げてみると、ブーツとマントと鎖のフード姿をした暗い影が、路地の突き当たりで壁に寄りかかっているのが見えた。

他の連中は、連中らしく、これを自分達の男らしさに対する挑戦だと受け取り、そして数で優勢な上にさらには金という報酬も期待できる楽な獲物だと考えた(そうでなければ、1つ目の点については黙認していただろう)。私の遊び仲間集団のリーダーはその見知らぬ者に、彼らが夕食を終えてから私と一緒に前述の埠頭で命を終えたくなければ、その埠頭から飛び降りろと言った。

下っ端からほくそ笑いと勇気をもらい、リーダーは杖を胸の前に持ちながら前に踏み出した。その後は具体的に何が起きたのか分からないが、短時間の間にいじめっ子のリーダーは胸に短剣を受けて地面に横たわり、2番目のいじめっ子はブーツでやられて歯を3本失い(今でもそれを思い出の品として皮袋に入れて持ち運んでいる)、3人目は自分の杖をつま先(の親指!)の間から押し込まれ動けないようにされた。4人目と5人目はもう面白くないと考え直して、慌ててどこかへ去っていった。

バーン・ダルは私を起こすと、汚れを払って、近くの酒場へと引きずっていき、そこで私達は食事と飲み物を分け合った。私は命を救ってくれたお礼を言った。どうやったらこの恩返しをできるかと聞いた。彼の返事は短く、的を射ていて、それ以降の人生における行いに影響を与えるものだった。

彼はこう言った。「親切は返すな。他の誰かにあげてやれ」

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