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書籍

ブルワラ船長の記録

第二紀304年、アビシアン海

船員の数がこの勢いで減っていけば、俺たちの呪われた航海を生き延びるのはこの記録だけになってしまうかもしれない。トゥワッカよ、そのような運命を避ける力を授けたまえ。

俺の船で起きた事件について書くのを何日もサボっていたので、主な出来事をおさらいしておく。

俺たちはサマーセットを出発し、東の海域へと向かった。強烈な風が帆を満たしたため、航路の計算によればケフレムへの上陸は1週間早まる予定になった。乗組員たちは喜んだ。長い間海上にいたし、皆また慣れ親しんだ海域に戻りたがっていたからだ。太陽は高く、見張り台からは他の船も、嵐も見えなかった。すべては静かで、のんびりとしていた。俺たちはターヴァの好意にあずかったらしい。その時はそう思った。

ある朝目を覚ますと、俺たちはぴったりと台風の目の中に閉じ込められていた。どの方向を見ても、1リーグもの距離が黒雲と荒れた海で覆われていた。だが俺たちは無風で波もない、晴れ渡った空間の中に収まっていた。最初、俺たちはシーエルフの襲撃だと思った。乗組員は三日三晩の間、武装して戦いに備えた。交替で眠ったが、ほとんど休めなかった。嵐の雲を突き抜けて船が現れることも、俺たちの船の帆に風が当たることもないとわかると、今度はデイドラに目をつけられたのではないかと思うようになった。だが食糧は日々減り続けていたし、餓死を待つわけにもいかない。俺は手の空いている者たちにオールを漕ぐよう命じた。風がストロス・エムカイまで連れて行ってくれないのなら、俺たちの手で行くしかない。それが俺の過ちだった。

最初のオールが静かな水を貫いた瞬間、海は荒れ狂った。水面が乱れて弾け、百匹ものシー・アダーを放出した。シー・アダーの分厚い蛇の胴体が甲板に飛び込んできた。手にオールを持っていた者たちが一番大きな被害を受けた。オールは長すぎて戦いには向かなかったからだ。甲板下でシーエルフ監視のシフトを終えて休んでいた者たちは、体制を整える間もなく階段でアダーに襲われた。俺たちは何とかアダーを片づけたが、大量の犠牲者を出した。海は再び静かになり、甲板長はまだ碧落の岸へ行っていない者たちの手当てをするため、1日休息を取ることを命じた。

その夜は甲板下から聞こえる苦痛の歌で満たされ、なかなか休めなかった。しかし曇り空の朝を迎えると、大きな歓声が上がった。空には太陽が昇り、それと共に風も出てきた。ついに俺たちを閉じ込めていた静止は消え、帆は痛めつけられた船員たちを呪われた海域から運び去った。

これで俺たちの苦難も終わったと思った。だが風は戻ってきたものの、嵐は消えていなかった。俺たちは嵐のど真ん中を航海することになり、目に見えて数の減った船員たちを従えて、俺がこれまで不幸にも体験した中で最悪のスコールと戦う羽目になった。

熟練の船員が2人、雲の中から現れたインプの手に押されて船から落ちた。彼らの叫び声は波の下に消え、俺たちは嵐とインプの両方から必死で身を守った。インプの群れが襲いかかる中、武器を取れとの命令の声が方々から上がり、勇敢な乗組員たちは持ち場を守った。俺たちはかろうじて船を守ることに成功し、インプたちは退却した。

俺たちは歓声を上げ、それに劣らぬ熱意で周囲の雲を罵りつつ、これ以上の襲撃者が現れないことを祈って風との戦いに集中した。見える限りでは敵の姿はなかったが、嵐の攻撃はまだ続いた。俺たちが一瞬油断したその時、稲妻が落ちてきた。これまでに見たこともない、渦を巻く稲妻だった。威圧的な巨体が目の前に現れて、乗組員たちは恐怖の叫び声を発した。石と嵐の獣が、俺たちの船に凄まじい力をぶつけてきたのだ。

だが、奴らから逃げる手段はなかった。俺の船は速いが、風より速くは走れない。甲板は滑らかだが、稲妻は跳ね返せない。俺たちは船をバラバラにされないよう必死に戦った。それで精一杯だったのだ。そうして、生き残った半数の勇敢な船員は、雷に命を奪われるまで持ち場を守り、仕事を果たした。

俺は広い海でも最低の船長だった。たったの2日で、俺は見たこともない怪物を相手に船員の半数以上を失ったのだ。襲撃を受けるたび、俺は船員たちを守ろうと焦ったが、何もできなかった。どうやって精霊たちから逃れたのかわからない。どこを航海したか、どうやって船を動かしたのかもわからない。ただ運がよかっただけだ。精霊どもがいなくなったのはトゥワッカの祝福だが、俺たちの旅がまだ終わっていないことは呪いだ。

俺たちの船と安全なサマーセットとの距離を乗り越えるのは不可能に感じる。俺たちの旅路は海と空に呪われている。通らねばならない海域から敵が出現し、今もこの数日の間に、大切な船員たちが苦痛に倒れている。

俺たちの物語がどう記憶されることになるかはわからないが、この記録は俺たちよりも長生きするだろう。もし神々の祝福があって、俺たちも生き延びられたら、俺はかつて愛した海を離れるつもりだ。海は俺を裏切った。ターヴァよ、我らを家へ導きたまえ。でなければ速やかな最期を与えたまえ。

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