議長が到着した。アブナー・サルンという気むずかしいニベン人の政治家だ。これにより虫の王の城の空気は面白い方向に一変した。彼は大声でばかげた命令をし、自分の気まぐれに我々が合わせると思っていた。彼を無視すると「私を誰だと思っている!」だの「マニマルコに言いつけるぞ!」だの子供のようにわめいた。虫の王は彼を無力な愚か者と考えていた。そう言うのを私も聞いた。 しかしサルンは愚かではなかった。彼は自分が用済みとなったのではと薄々感じていたと思う。己の娘がルビーの玉座につき、マニマルコ王が彼女の頭を高貴な妄想でいっぱいにすると、サルンの権力は言葉にする価値もないものとなった。摂政女帝は小装飾品や絹、珍しい食品で簡単に操れる。彼女は父親に対し愛情を見せることはほとんどなく、私の知る限り彼の不在にも関心を持つことはなかった。帝国宮廷での長年の政治経験にも関わらず、この老人はマニマルコが見せた操り手としての才能の半分の力量もなかった。 サルンの最大の誤算は、それでも自分に価値があると思っていたことだ。大きな計画の中で我々は、とりわけ彼は捨て駒なのだ。シロディールでの権力など、残虐と支配の王にとっては何の意味もない。 しかしサルンの無力なかんしゃくは楽しみの種である。いつかこれに飽きた時を想像する。その日にはいいワインを片手に、彼がのたうち回るのを楽しもう。今まで何千人もされてきたように、肉体から魂が引き裂かれる様子を見るのだ。
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