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書籍

報復の嘆願

私がこの手記をしたためるのは、我が街カムローンの滅亡を記録に残し、報復を呼びかけるためだ。

急いで書き上げなければならない。おぞましい怪物どもの吠え猛る声が扉の外から聞こえてくる。バリケードが後どれだけ持つか分からないが、この手記だけはなんとしても完成させ、連中に見つかる前に隠してしまいたい。

そもそものきっかけは何だったのか。ほとんどの滅亡がそうであるように、我々もまた裏切られたのだ。裏切り者の名はジョナサン・テルウィン。かつて、私の友人だった男だ。奴はアンゴフへの忠誠を誓い、ファオルチュと呼ばれるアンデッドの怪物に仕える道を選んだ。ジョナサンはそれを私に打ち明け、仲間に加わってほしいと言ってきた。私は取り合わなかった。どうせいつもの悪ふざけだろうと思ったからだ。だが、それは間違いだった。

ファオルチュはジョナサンをシェイプシフターに変えた。そして、城門を破った最初の狼は、まるで自分の棲みかのように、ブラブラと入ってきた。我々は彼を中に入れた。なぜなら、街が彼の棲みかであることは本当だからだ。いったん市内に入ると、ジョナサンはファオルチュの呪い(彼自身は「恵み」と呼んでいたが)を街中に広めた。呪いにかかった者たちは草木も眠る夜更けに集まった。暗闇に響く彼らの吠え声を、我々はおおかた野犬の遠吠えだろうと片づけてしまった。

しだいに数を増やした呪われし者たちは、城門という城門をあけ放ち、ファオルチュとその狂った群れの残りを市街に引き入れた。それが今から数時間前、日が暮れて間もなくのことだ。彼らに刃向かう者は誰であれ、八つ裂きにされた。血が――あまりにもおびただしい血が流された! 殺されなかった者は… 変身させられた。私は友人や隣人が目の前で狼に変わるところを見た。彼らの叫びには苦悶と恍惚が入りまじり、私は心のどこか暗い奥底で、彼らの仲間に加わりたいと願った。しかし、私はその考えを振り払い、家族を安全な場所に連れてきた。

もっとも、「カムローンの衛兵」がいなかったら、それもかなわなかっただろう。ダリアン隊長率いる少数の衛兵たちはウェアウルフの群れに攻撃を仕掛け、逃げる我々を守ってくれたのだ。これだけは書いておかなければならない。ダリアン隊長は神々しかった。彼にはどんな攻撃も通じないように見えた。彼は敵の攻撃をかわし、受けとめ、まるで楽しくて仕方がないとでもいうように笑っていた。隊長は一軒家までの道を切りひらいては、市民の一団に中に入るよう呼びかけ、扉と窓にバリケードを築いた。我々も隊長に助けられたグループの1つだ。

隊長と衛兵たちがその後どうなったかは知らない。だが、彼らには感謝している。… 今、ものが焼ける臭いがしてきた。狼どもは我々をいぶし出すつもりなのだ。

最後にこれだけは言っておきたい。ジョナサン・テルウィンは臆病者だ。奴は易きに流れ、少なからぬ人々を丸め込んで道連れにした。奴の加担した殺戮を許すことはできない。誰かがもしこれを読んでいるなら、どうかカムローンの仇を討ってほしい。ファオルチュとその配下の怪物たちの息の根をとめてほしい。この悪行をうやむやにしてはならない。

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