ある時、幼い少年が両親と共に湖の畔へ向かった。
彼は裕福な家の御曹司であった。
大人達が気取り屋の仲間と小屋でワインをちびちび飲む傍ら、少年は泥遊びでもするようにと放置された。
蔑まれている気がした少年はひどく悲しみ、1人で友達を探しに行くことにした。
友達探しにそう時間はかからなかった。
葦の葉の中で驚くほどお喋り好きなアヒルを見つけたからだ。
そのアヒルは少年が想像でしか描けないような場所のことを話してくれた。
少年はすぐに物語の虜になったが、そんな場所を自分の目では決して見ることができないと思うと悲しくなってしまった。
そんな少年にアヒルが笑ってこう言った。
それは違う!一緒に作るんだ!
少年とアヒルは水の中をどんどん進んで湖に浮かぶ小さな島まで行くと、木の枝と砂を使って力を合わせて小さな小さな家を建てた。
しかし1時間も経たない内にアヒルがこう言いだした。
こんな家は君には相応しくない。
宮殿が相応しい!
でも接合に使うモルタルが足りない。
大人が1人でもいればなぁ。
少年は小屋に戻ると、用を足そうとして外に出てきた貴族にちょうど出くわした。
そんな有頂天な貴族を少年は容易く丸め込み、島まで案内したのだ。
戻ったところでアヒルが貴族に飛び掛かり、その喉を切り裂く。
彼の血と肉をモルタルに、さらに骨を梁に使った。
少年の心は躍ったが、宮殿はもっと大きくなければならない!
少年は何度も何度も戻って、壮大な宮殿を見せようと酔っ払い達を集めた。
そしてアヒルは何度も何度も彼らの体の一部を壮大な宮殿に加えていったのだ。
やがてその尖塔やアーチは乾き、アラバスターや金に変化していった。
両親が少年を迎えに来た時、彼はその壮大な宮殿を2人に見せた。
2人は大きな声で叫ぶと、少年とアヒルを置いたまま走り去ってしまった。
しかし少年はちっとも悲しくなかった!
少年とアヒルは共に島で陽気に過ごした。
そのうち島は霧に閉ざされ、歓喜と陽気に満ちた永遠の世界へと誘われていったのである。
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