私たちはバーンダリ。旅する者。
けれど必ず暖かな砂地に戻ってくる。
灰色ではなく、緑の地へと。
柔らかな声と笑いが聞こえる。
アジンはいつだって必ず私たちのもとに帰ってくる。
そしてエルザールが育ったのを見て笑う。
旅ができるほど大きくなったぞ。
そう言ってあなたを放り上げる。
あなたが喜んで笑うから。
そうして旅をして商売をしてきた。
私たちは交易の腕と、遠く様々なところへ旅をする力で一目置かれている。
遠くまで旅をするから、この不思議な世界を他の人々よりずっと多く目にしてきたと思ってる。
月は私たちの旅路を見守って下さる。
すべてはうまくいっていた。ロスガーにくるまでは。
寒さ。危険。死。危険な生き物に襲われた。
ウスリが古い遺跡を見つけ、そこに駆け込んだ。
避難するつもりだった。
ウスリとシュラが火をおこし、この者はあなたを探した。
来る日も来る日も探したのよ、私のかわいい坊や。
風と雪はあなたの痕跡を消し去ってしまっていた。
でも母親には分かる。
私のエルザール。あの子は生きている。
他の人たちはこの者を憐れみの目で見る。
悲嘆にくれるアジンですらそう。
でもこの者には分かる。
あなたにまたおかしな話ができるって。
ゲームをして、あなたが笑う声をまた聞くことができるって。
母には分かる。
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