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書籍

ウェイリモの体験記

秘術師ウェイリモ著

こうなるとわかっていた。なぜウェルキナーはシースロードを連れてこようと考えたのか。全くわからない。今、クラウドレストは廃墟になり、私は幸運にも生きている。

全ては大釜から吹きこぼれるように、高所から流れ出た黒い霧から始まった。それから市場が静かになった。実をいうと、何が起こっているのかはっきりわからなかった。だが皆が良いことではないとわかっていた。

その時、霧の中から叫び声が聞こえた。誰もが街の門からできるだけ早く出ようと突進した。あんなに慌てた群衆を見たのは生まれて初めてだった。誰もが叫び、走り回り、逃げようとしていた。

しかし霧は我々の歩みよりも速く、間もなく私たちは霧に包まれた。私の肌には冷たい濃霧のように感じられた。突然、膝が崩れた。一瞬で力がすべて抜け落ちた。心臓の鼓動がゆっくりになっていった。存在全体が重くなった。こんな極端な疲労は今まで感じたことがなかった。

死んでいくとわかった。まもなく心臓の鼓動が完全に止まるだろう。横たわった私が考えていたのは… 私と一緒に何人が死ぬのだろうということだけだった。

力強い2つの鉤爪に掴まれたのはその時だった。ウェルキナー・オロライムが助けに来てくれて、街の上流に私を降ろした。救助の記憶はほとんどないが、自分の胴体がきつく抱き締められた感覚と、肌に当たる風はよく覚えている。

シースロードがどんな力を持っていたのかはわからないし、知りたくもない。だが危うく命を奪われそうになった。他の大勢の、既に奪われた命のように。

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