ナーリアはジュリアンと私にスコラリウムの記録に追記してくれと言った。ジュリアンが秘密裡に追記をしたためているのかどうかは知らないが、きっとそうなんだろう。ここにはあまりに本が多いので、何を書くべきかわからなくなりそうだ。間違った論題なんてあるのだろうか? アークメイジ・ウルフシルドは自分の蔵書庫にあらゆる種類の本を所蔵しているから、彼女の蔵書にそぐわないものなんて書けないはずだ。その点はまあ安心だ。うーん、それならこれにしよう。
ランプの騎士、信奉者ラーレンの文書
人生が予想どおりになることなどあるのだろうか。若い頃の私は戦闘や小競り合いで、葉の間を駆け回って敵の不意を突くことを夢想していた。冒険はいつも刺激的な洞窟探索と発見だと思っていた。
そういう場合もあるし、そうなった時は興奮する。だが冒険と戦いは若者の私が考えていたよりも遥かに複雑だ。私の同郷者の多くは、今の私が騎士団でやっている仕事を決して評価しない。彼らはある種の冒険を求め、兵士となった。私にとっては運のいいことに、ランプ騎士団は私に騎士となる資格があると考えてくれた。
筆を手にしてここに座っていると、自分がやってきたこと、見てきたことが信じられなくなる。私は魔術師の用心棒になるだけだと思っていた。彼らが何か深刻な学者ぶったことをやっている間、トロールやミノタウロスから守るだけだと。だが私の人生はまったくそうならなかった。
いや、一応トロールと戦いはした。
しかし喜ばしいことに、私は単独で戦いはしなかった。私が守る役目を与えられた魔術師たちのほぼ全員が、自分の身を守れる力を持っていた。時には(例えば今)、騎士団の信奉者と組めることもあった。
恐るべきドレモラと崖上で戦ったこともあるし、怒り狂う精霊を山の奥地で倒したこと、アンデッドの軍団を突破して死霊術師たちに地域を蹂躙されるのを防いだこともある。こうした戦いが楽勝だったと言うほど私は理想主義者ではない。魔術師は多くの騒音を立てるし、注意をそらす原因になる。魔術の戦いの混乱の中で、自分の武器を使って戦うのは簡単なことではない。おそらく、騎士団が誰を入団させるかにあれほど厳格なのはそのためだろう。どんな戦士でもあのような状況で実力を発揮できるわけではない。
だが、私は今この秘密の蔵書庫にいる。もっと危険だと思っていたが、ゆったりとした任務に不満はない。探索する場所も学ぶことも沢山あるから、次の任務を待って無為に過ごすこともなさそうだ。だから、人生は私が思っていたようなものではなかったし、それは素晴らしいことだ。それが現実だ。
うーん。とりあえずこの点に関して私に言えるのはこれくらいだ。ナーリア、これが蔵書に追記するのにふさわしい内容だといいのだが。それに今どこにいるにせよ、ウルフシルドは私たちがここでやっていることに喜んでくれるだろう。
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