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書籍

グリーンパクト・ボズマーが見る幻視

以下はモルヴァス・アンドリスによる4巻からなるグリーンパクト・ボズマーの研究書からの抜粋である。この研究は第一紀に3年間続けられたが、モルヴァス・アンドリスがとある弔い合戦で命を落とし、研究していたクランに貪り食われたことで途絶した。

…ファニリエルは齢100歳にして沼地の発光ガエルを食べ、上下が逆さまの樹木都市、ハートグリーンの幻影を見た。そこには逆立ちをして両手で歩くエルフたちが住んでいたという…

…「窃盗の権利」後の請求に成功した回数が200回を超える怪盗ヴァニリオンは、かつて森の真ん中に現れた木に登り、幻視を見たと言われている。

その木は葉が紫色で、ヴァニリオン自身の言葉によれば、そうした紫色の葉に囲まれて座っていると、得も言われぬかぐわしい匂いがしたという。その甘い香りを嗅いでいるうちに、ヴァニリオンは心が穏やかになり、一種陶然とした境地に入った。樹木が環状に茂る森が見えたのは、その時である。森に足を踏み入れたヴァニリオンだが、奥へと進むにつれて樹木の環は広がり、いつまでたっても森の中央にたどりつけない。

そうやって森の中をさまよううちに、ヴァニリオンはそれまでに見たこともないほど美しい霊魂に出会う。その霊魂は話す時、文章が堂々巡りをするよう、本来最後に来るべき言葉をあえて頭に置いた。「横になりましょう。おいでなさい。川のほとりで一緒に」

木の葉の強力な芳香によって恍惚境に陥っていたヴァニリオンは、枝から落ちてようやく我に返った。命に別状はなかったが、落下の衝撃で片脚を折ってしまい、盗賊稼業は廃業した。ヴァニリオンはその後の人生を、葉が紫色の木を探すことに費やしたが、ついに見つけることはできなかった。

私は樹の従士に尋ねて見たことがある。パクト・ボズマーはそうした幻視を「見る」と言うが、「思い浮かべる」と表現するほうが適切ではないかと。というのも、こうした奇妙な幻影に登場する都市や森やその他の驚くべき事象が、ニルンにもオブリビオンにも実在しないことは明らかだからだ。

その樹の従士は、何やら当時流行りの発酵牛乳らしき臭い飲みものを長々とあおると、自分の足元を見つめ、それから空を見上げておもむろに答えた。「世界は自分の目で見える範囲で終わっているとあなたがたは言う。我々は違う。自分の目で見える範囲を超えたところから、世界は始まるのだ」

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