スポンサーリンク
書籍

ウッズマー

ウィローレッグは足首をさすった。折れてはいない。捻っただけだ。彼は慎重に足に体重をかけ、立ち上がった。よし。耐えられそうだ。ヴァレンウッドを旅しながら、よく転んでいた。彼の片足はもう一方より細く、時々それを忘れてしまうのだ。

「さて、ここはどこか突き止めるか」。ウィローレッグは言った。頭上高くで揺れる木々の葉を見上げると、その間に青空が時折見え隠れする。ウッドエルフでなければ、そんなわずかな眺めからは何もわからない。ウィローレッグはすぐにまた歩き始めた。

すぐに、自分だけではないと気付く。彼の左手に別のウッドエルフがいた。ぼさぼさの濃緑色の髪を顔の周りに垂らしている。一人旅に慣れている彼は、その静かな同行者が彼を追い越さないよう、歩く速度を合わせていることにも気が付いた。

「あんたもファリネスティに?」。ウィローレッグは訊ねた。

「ああ」

ウィローレッグは気さくに続けた。「移動前に夏の地に着けるといいんだが」

緑髪のウッドエルフは言った。「大丈夫だろう」。これ以上話したくなさそうな声音にウィローレッグは黙って頷き、歩き続けた。

彼らはその日ずっと、黙ったまま一緒に旅をした。ウィローレッグが休憩しようと止まると見知らぬ男も足を止めた。ウィローレッグは水と干し肉を分けてやった。そしてまた、残りの旅路につく。木々がまばらになっていき、ファリネスティがぴったり収まった空き地に出た。

空き地の端で、見知らぬ男は立ち止まりウィローレッグの腕に手を置いた。驚いたウィローレッグは、その緑髪のエルフの肌がザラザラで硬く、樹皮のようだと気付いた。

「ここにいろ」と男は言い、小声で呪文を唱えた。

ウィローレッグは動くことも話すこともできず、男がファリネスティの根元へ行き、表面に額で触れるのを見ていた。木の街は震えると、大地から根を上げてゆっくりと移動を始めた。

緑髪のエルフがファリネスティを連れて歩き去ると、ウィローレッグはかけられた奇妙な呪文が解けるのを感じた。そして手足のうずきとともに動けるようになった。下を見た彼は細い片足が治っているのに気付いたが、靴はなくなっていた。

「ウッズマーだ」。ウィローレッグは畏敬の念を抱きつぶやいた。ウッズマーは森で不用心に迷った者を導く神話の存在だが、道を知る者に恵みを授けるとも言われている。

ファリネスティは南へ移動し、ウィローレッグはどこへ行ったのかと考えた。

コメント

スポンサーリンク