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書籍

狼と海賊女王

グウィリム大学歴史学者、ミダラ・サルヴィティカス著

クヴァッチの狼、カロラス・アクィラリオスの活躍のおかげで、海賊女王フォーチュナタ船長が港に航行してきた時には、アンヴィルの守りはほとんど存在しない状態だった。港街に配属された帝国兵士たちが幾度となくクヴァッチの侵略を試みた結果、アンヴィルの兵舎は狼を相手にした敗北続きでほぼ空になっていた。フォーチュナタ船長に忠実な海賊たちはすぐさま街を乗っ取り、彼女は自ら地方総督の地位に就いた。

それで収まっただろう、とカロラス伯爵は見ていたが、海賊女王は次の行動に出ることにした。彼女はゴールドコーストが独立し、シロディールと帝国から解放されて独立した国になったと宣言した。クヴァッチが新しい体制の一部としてアンヴィルに加わるよう彼女が要請すると、伯爵はそれを拒否し、皇帝ヴァレンに忠誠を誓い続けることを望んだ。当時は勝利に確信が持てなかったフォーチュナタは強要しなかった。しかし伯爵による支持の欠如を忘れはしなかった。ソウルバーストが起きてヴァレンが消えた時、彼女は突然孤立したクヴァッチの状況を利用し、より強い態度で要求を迫った。

アンヴィルはクヴァッチに対し、外交と不正な手段の両方でゴールドコーストへ加わるよう強要を始めた。略奪者と山賊団がクヴァッチ周囲の黄金街道沿いに現れ始め、交易を妨害し、旅人を襲った。クヴァッチの精鋭である番人たちが山賊に対処するために派遣されたが、その度に山賊たちはストリッド川へ逃げ延びることができた。そして人数を増やして戻ってくると、攻撃を拡大して遠くの農場まで襲撃し、怖がった避難民は街の保護を求めた。

こうした侵略にもかかわらず、カロラスの忠誠は揺るがず、海賊女王と交渉することを拒否した。激怒したフォーチュナタは、クヴァッチが正式にゴールドコーストに併合されることを発表した。彼女は街を乗っ取るためにアンヴィルの衛兵を派遣した。クヴァッチの伯爵は壁に番人を配置し、侵略者に対抗するために歩兵隊を派遣して対処した。両勢力は宿屋〈ゴットショウ〉近くの黄金街道で対面した。統制が行き届き高度に訓練された歩兵隊は、アンヴィルの寄せ集めの衛兵を粉砕したが、状況は見た目どおりではなかった。それは罠だったのだ。隠れていた海賊の集団がなだれ込み、歩兵隊を取り囲んだ。海賊たちはボロボロの服装で統制も取れていなかったが、その数では兵士たちの6倍と圧倒していた。歩兵隊は壊滅し、それはゴットショウの大虐殺として知られるようになった。

カロラス・アクィラリオスに選択肢は残っていなかった。歩兵隊の助けがなくては、ゴールドコーストへの忠誠を誓うしかなかった。海賊女王とアカトシュ大司教の2人に挟まれる形になった伯爵は、誓いを守ってクヴァッチの街と人々を守ろうと全力を尽くしながらも、自分の力の無さに憤っていた。

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